シナリオ編<オマケ1>「ボツシナリオ(1)フレンズ」 第46回ウォーターフェニックス的「ノベルゲーム」のつくりかた

第46回 シナリオ編<オマケ1>「ボツシナリオ(1)フレンズ」
執筆者:企画担当 ケイ茶


bro5

他の会社さんや、個人のクリエイターがどうやってノベルゲームを作っているのかはわかりません。
ここに書かれているのは、あくまで私達「ウォーターフェニックス」的ノベルゲームのつくりかたです。


ケイ茶です。
ちょっとお久しぶりです。
シナリオ担当Rによる、シナリオ編ですが、現在Rがシナリオ執筆のため一旦お休みとさせて頂きます。(再開日は未定です)

そして、私の方からちょっとオマケとして何回か書かせてもらいます。

◆ボツシナリオを公開!~フレンズ~


@フレンズ
「料理の事ならワタシに任せてください」

抑揚のない声と共に、包丁を持つ手が振り下ろされた。

一瞬前まで俺がいた場所を切り裂いたそれに、息を呑む。

月の光を反射してきらめく刃は、ところどころ赤黒く染まっていた。

あれは一体、どんな人物の血だったのか。

思わず頭に浮かんだその考えを振りはらいながら、呼吸を整える。

@フレンズ
「ワタシには、苦手な料理はありません」

「一般的な鶏肉、豚肉、牛肉、馬肉、山羊および綿羊肉から、熊、鹿、その他ご要望があればどんなものでも」

「解体から血抜き、保存や食用でない部位の活用まで、ご主人様のお望みのままに致します」

@俺
「っ……!」

再び振り下ろされた包丁を避けながら、冷静に動きをみる。

型は多少違うものの、調理フレンズとは前にも対峙した事がある。

動きは単調だ。

一定の間隔をおいて、包丁を向けてくるだけ。その動き自体も、ある程度のパターンがある。

足の速さも人間とそう変わらない。

対フレンズ用武器さえ残っていれば、すぐにでも壊す事ができるのだろうが……。

@俺
「……くそっ」

周囲を見回しても、見えるのは生い茂る草や木々だけだ。

どうしようもない。

そう考えた時――別の声が聞こえた。

@フレンズ
「こんばんは」

ハッとして声のした方を見れば、複数の瞳が闇の中に浮かび上がっていた。

「こんばんは」

「こんばんは」

「こんばんは」

一つ一つは囁くように小さなそれは、さざなみのように重なりあって俺を追ってくる。

同時に近付く足音を聞きながら、俺は木の陰で包丁をやり過ごして息を整えた。

今、目視できるだけでも、闇に浮かび上がる瞳の数は8。つまり、少なくとも4体はこちらに向かってきている。

@俺
「っ……」

だめだ。この数をひとりで相手にするなんて、できるはずがない。

そうすぐに判断し、走り出した。

;▲
草や木の幹に転びそうになりながらも、俺は足を止めはしなかった。

とにかく走って、走って、走って……それが目に入った。

@俺
「っ、建物か……!」

見たところ、大きくて頑丈そうな建造物だ。

すぐさま、その建物の入口らしきところに近付く。

@俺
「……?」

だが、入口だと思ったその場所は、よく見るとドアノブのようなものがなかった。

どうやら、手動ではなく機械制御で開くタイプのものらしい。

隙間に爪を引っ掛けて開けようと試みるものの、ピクリとも動きはしない。

そんな事をしている間に、聞こえる足音は大きくなり、

@俺
「く……」

――囲まれた。

振り返ると、前方、右側、左側にそれぞれフレンズが立っていた。

@フレンズ
「何を調理すればよろしいでしょうか」

調理フレンズは、やはり赤黒い包丁を持ったまま、一定の間隔で振り下ろし。

@フレンズ
「僕と一緒にお勉強しようよ」

「100点とれたら、頭ぽんぽんって撫でてあげるよ」

勉強フレンズは、手に鉄の棒を、不規則に揺らす。

@フレンズ
「ご主人様。お風呂のお掃除、終わりましたよ」

掃除フレンズはノコギリを持って、箒のように左右に振り回していた。

それぞれがほぼ同じ距離で、同じ速度のまま俺のところに近付いてくる。

このままだと、殺されてしまう。

生き残るためには……!

@俺
「やるか……!」

こんな扉に張り付いて殺されるよりは、少しでも抵抗した方が良い。

そう思って、調理フレンズの方めがけて走り出す。

@フレンズ
「何を作ればよろしいでしょうか?」

@俺
「はっ……」

平坦な声と共に振り下ろされた包丁を、右に避ける。

やはり、動きのパターンは俺が知っているものと一緒だ。

これなら、油断さえしなければ避ける事はできる。

@フレンズ
「現在手に入る食材から作る事が可能なレシピは、224あります」

「その中でのオススメは、唐揚げ、ハンバーグ、ステーキとなっております」

@俺
「っ……」

包丁の切っ先とフレンズの手の動きをよく見て、確実に避ける。

大丈夫だ。調子よく避ける事ができている。

ただ、問題は前に進む事ができない、という事だ。

包丁から避け続けても、この場から逃れる事ができなければ意味がない。

このままだと、他の2体もすぐに近付いてくるだろう。

それまでに、逃げ道は……。

@俺
「あ……」

考えた時、ふと、背後で音がした。

視線だけを動かして、音のした方を見る。と。

@俺
「開いた……!」

さっきの扉が、開いていた。

それを目にして、すぐに走り出す。

@俺
「待ってくれ……!」

扉は開いたばかりだというのに、もう閉まり始めている。

そこに、手を伸ばす。

力を込めて、自分の体を引き寄せるようにしながら体をすべり込ませる。

それが、本当にギリギリ、だった。

@フレンズ
「調理を……」

俺の後をおっていた調理フレンズは間に合わなかったらしく、扉にはさまれて、つぶれていく。

@フレンズ
「調理を、調理を、か、かい、し」

「調理を、開始――」

ぐしゃり、と。人工皮膚の合間からオイルを垂れ流し、ネジなどを大量にばら撒きながら、フレンズは粉々に砕け散った。

そして――再び、扉は完全に閉まった。

そうすると、他にいたはずのフレンズの声も、何も聞こえなくなる。

外部からの音はすべて遮断されたという事は、見た目通り厚い壁でできているらしい。

これなら、扉を壊されて入って来られるという心配はないだろう。

ほっと息を吐きながら、周囲を見回す。と、

@俺
「なっ!」

いつの間にか、真横に女が立っていた。

@???
「うーん……?」

小首を傾げるその体が透けているところからすると、立体映像……3Dホログラムか。

それを目を眇めつつ見ていると、女は不意に振り返った。

そうして俺に向かって両手を広げ、朗らかに言う。

@???
「私の家にようこそ!」

「君は、初めて見るお友達だね」

@俺
「は? おともだち……?」

@???
「うん。こうして出会ったんだから、もうお友達だよ」

「私はここの案内役AIの、○○」

@俺
「AIというと……自分で判断したり、経験から学習したりするコンピュータープログラムの事、か?」

@○○
「私みたいなAIが、珍しいの?」

@俺
「ああ。まだ少しとはいえ、こうして自然な会話が成立するものと対するのは初めてだ……」

「狂ったAIを搭載した機械なら、毎日のように見ているんだがな」

@○○
「ふーん……?」

「おかしいなぁ。私の周りでは、優秀なAIばかりなんだけど……。まぁ、いっか」

「ところで、君の名前は?」

@俺
「……俺の名は、主人公だ」

「見ず知らずの俺を招き入れてくれた事、感謝する」

おともだち、などと妙な事を口走るAIだが、俺を歓迎する言葉からすると、彼女がこの扉を開けてくれたのだろう。

そう判断して礼を言えば、○○は快活に笑った。

@○○
「ここは見学無料で、事前の連絡も必要なし。いつでも、誰でも入っていいんだよ」

「もちろん、人だけじゃなくって、フレンズだって大歓迎」

「だから主人公君も、次はフレンズと一緒に訪問してくれたら嬉しいな」

@俺
「……笑えない冗談はやめてくれ」

扉でつぶれたフレンズの姿が、脳裏をよぎる。

「フレンズがこの建物の中にもいるなんて、想像するだけで怖気が、」

@○○
「えっ? フレンズなら、いるよ」

@俺
「……い、る?」

@○○
「うん。ほら、あそこ」

○○がゆっくりと、腕を持ち上げる。

そうして指先で示された先――廊下の奥には、たしかに2つの赤い輝きが見えた。

@俺
「な……っ!」

あの赤は、フレンズの瞳の光。

そう理解した瞬間に、走って近くの部屋へと飛び込む。

扉の隙間から様子を伺った限りでは、まだ気が付かれていないようだ。

なぜか、そのフレンズは壁に背中を預けて座っているらしいが……油断はできない。

激しく脈動する鼓動の音を感じながら、○○を睨む。

@俺
「……どういう事だ。なぜここにフレンズがいる?」

@○○
「なぜって、そりゃあいるよ」

「この1階部分は、フレンズ工場だからね」

@俺
「フレンズ工場……?!」

それは、とても嫌な響きだった。

発音して舌の上にのせるだけで、ざらりと。砂がまとわりついたような、不快感が湧き上がる。

フレンズが生み出される場所が各地に存在する事は噂で聞いていたが、まさか、ここがそのうちの1つだったとは。

命からがら逃げた先が敵の本拠地だったなんて、笑い話にもならない。

@○○
「でも、さっきから不思議なんだよね」

「普段はもっとたくさんのフレンズがいるのに、どうして今は1人しかいないのかなぁ」

「君は、何か知ってる?」

訊ねられても、答えられるはずがない。

普段は多くのフレンズがいるという事を恐ればいいのか。それとも、今はまだ運が良い方だと喜べばいいのか。

俺が無言でいると、○○は苦笑した。

@○○
「ごめん。お客様に訊くなんて、案内役失格だね」

「えっと、じゃあ気を取り直して……」

「なぜかフレンズは1人しかいなくって、建物内も静かなんだけど……でも、大丈夫だからね」

@俺
「……何が、大丈夫なんだ」

@○○
「たった1人しかいなくても、フレンズの魅力はよくわかるよ」

「そう。まずは、挨拶でもしてみようか」

@俺
「は?」

一体――誰に挨拶をするつもりなんだ、と。

俺が問いかけるより早く、○○が口を開いた。

@○○
「ねぇねぇ、そこのフレンズさーん!」

@俺
「なっ、あ……!?」

とっさに、○○の口を塞ごうと手を伸ばしたが、よく考えてみれば相手は3Dホログラムだ。

俺の手はすり抜けるだけで何の意味もなく、○○の声が響き渡る。

@○○
「こっちに来て、私たちと一緒に遊ぼうよ!」

そして――そんな声に呼応するように。

遠くに見えていたフレンズの瞳が、ゆらりと揺れた。

左右に動くその光は、俺たちの方を見て止まる。

@フレンズ
「こんばんは」

@○○
「こんばんは!」

耳に届いたフレンズの声に、絶望が襲う。

気付かれた。見つかった。武器も何もないこの状況で、フレンズが、俺を見ている。

そう思うと、わずかに体が震えた。息がつまり、顔がひきつる。

凍りついたかのように動かなくなったその体を溶かしたのは、場違いな明るい声だ。

@○○
「ほらほら主人公君、フレンズが挨拶してくれたよ! 嬉しいね!」

「これがフレンズの魅力、その1」

「フレンズは、自分が呼びかけられたら、ちゃんとわかるんだよ」

@俺
「……何が、魅力だ」

横でごちゃごちゃとつぶやいている○○に舌打ちをして、走り出す。

やはり、AIなんてものはあてにならない。話すだけ無駄だ。そう思うが、

@○○
「あれっ。君、どうしてそっちに行くの?」

「ねぇねぇ。フレンズがいるのは、そっちじゃなくてあっちだよ?」

……うるさい。

@○○
「ほらほら、後ろを見てみてよ」

「フレンズが、元気に追いかけてきてくれるでしょ。これが2つ目の魅力だよ」

「フレンズはね、とっても好奇心旺盛で人懐っこいんだ」

「だから、人間を見ると近付いてくるんだよ」

「かわいいよね」

次々にかけられる声は陽気なもので、苛立ちが湧き上がる。

俺の横を、同じように――3Dホログラムなのでそう見せているだけだろうが――走る○○の意図が掴めない。

@○○
「ねぇ、主人公君。フレンズ、君を追ってきているんだよ」

@俺
「……いい加減、黙れ。そんな事は言われなくてもわかっている」

@○○
「んー。だったら、立ち止まってあげてくれないかな?」

「追いかけっこを楽しみたい気持ちはわかるけど、それなら最初に『君が鬼だよ』って教えてあげるのが礼儀だと思う」

「何も言わずに逃げちゃうなんて、ちょっと可哀想だよ」

こいつは、フレンズから逃げ惑う俺を見てせせら笑いたいのだろうか。

そのためにこの建物内に招き入れたのだとしたら、とんだ性悪プログラムだ。

それともやはり、ただ狂っているだけなのか。

@フレンズ
「ねぇ、一緒に遊ぼうよ」

@○○
「ほら、ああ言ってる。あのフレンズは、もう遊びが始まってるって事に、気が付いていないんだよ」

「ね。一旦、立ち止まってお話してみようよ」

「……もしかして、何をお話すればいいのかわからなくて、恥ずかしいのかな?」

「だったらまずは、よろしくって握手するだけでもいいんだよ」

……こいつは、手を潰されろとでも言いたいのか。

フレンズの手に捕まって骨を砕かれた人間の姿は、これまでに何人も見てきた。

手ならばまだいい。だが、首の骨や頭蓋骨まで片手で粉砕される事を思えば、フレンズに触れる事はおろか、近づく事だってしたくはない。

横でごちゃごちゃと続く言葉に、腹立たしさは増していくばかりだが、今は○○よりも、追ってくるフレンズへの対処が先決だ。

;▲

とにかくまずは足止めをしようと、周囲を見回す。

そうして目に入ったのは、立ち並ぶ棚と、そこに収納された箱だ。

いくつも並ぶ箱の一つを、走りながら軽く押すと、中に何かが詰められているのがわかった。

ならば、と。箱を掴み、

@俺
「……っ!」

後ろに向かって投げつけた。

@○○
「あぁっ!」

@フレンズ
「一緒に遊ぼうよ。一緒に遊ぼうよ。一緒に、」

箱はうまくフレンズに命中し、そのバランスを崩したようだ。

後ろに倒れて行くその姿を目でとらえながら、すぐさま、2個目、3個目の箱を投げつけていく。

@○○
「ちょ、ちょっと! 何やってるの!?」

@俺
「っ、く……!」

○○が、俺とフレンズの間に立ちふさがる。

だが、それも所詮はホログラムだ。先程俺が○○の口を塞ぐ事ができなかったように、○○がそこにいようが何の意味もない。

@○○
「主人公君、やめて!」

@俺
「壊れろっ!」

俺の投げた箱は、○○の体を突き抜けてフレンズに直撃する。

@○○
「やめて。やめてったら!」

「これじゃあ、フレンズが可哀想だよ!」

@俺
「壊れろ、壊れろ、壊れろ……っ!」

願いながら投げ続けるが、この程度で壊れる存在ではない事は百も承知だ。

それでも、箱の中身が散乱し、バラバラとフレンズの頭上に降り注いだ事もあって、その姿は箱の下に埋まっている。

これならば、起き上がるまでには多少時間がかかるだろう。

そう判断して、俺は再び走り出した。

;▲
@○○
「ひどい。ひどいよっ、あんな事、するなんて……」

ぐすぐすと、耳元で泣き声がする。

先程から、ずっとそうだ。どこまで走ってもついてくるその声と姿は、煩わしいとしか言い様がない。

@俺
「おい。いい加減、泣き止んで答えてくれ」

「この建物の中に、銃火器はないのか?」

@○○
「銃火器……?」

「そんな、物騒なものなんてっ……ない、よ」

@俺
「なら、刃物はないのか? 爆発物を作ることのできる、薬品は?」

@○○
「そんなものがあったとして……どうするの?」

「また、あのフレンズを虐めるの……?」

@俺
「虐める程度では意味がない。壊す」

「できれば粉々に砕きたいが、それが無理でも、移動不能なほどに四肢を損壊させる事ができればいい」

@○○
「……」

こんな事を言えば、このフレンズ贔屓のAIは、また酷いだとかわめくのだろうか。

そう思って眺めてみるが、返ってきたのは、思いの他落ち着いた声だった。

@○○
「どうして、君はあのフレンズを壊したいの?」

@俺
「壊さなければ、俺が殺されるからだ」

@○○
「殺される? 君が?」

「……」

「フレンズが、人を……殺す?」

驚きに目を見開いたその反応に、やはりわかっていなかったのか、と内心で溜め息を吐く。

@俺
「あのフレンズの手には、人間の血らしきものが付着していた」

「だから多分、誰かが殺されているはずだ」

———-中略

@○○
「……たしかに、君の言うとおりだった」

「あのフレンズは、過去に人間を1人、殺してる」

「私……あのフレンズに、殺されちゃったみたい」


 

 

という感じの始まり方の「フレンズ」という短編物語。
設定は結構気に入っていて、短編としてもよさそうなんじゃないか。と色々考えはしたのですが、結果ボツになってしまったタイトル。

ボツにした理由としては、この冒頭が出来上がった時点で、何かが足りない。
そう思ってしまったから。

設定の説明がしにくい、という点もありますし、主人公とヒロインのキャラクター性が掴めなかった(確立しなかった)というのが一番大きかった。

フレンズという元は人間の友達として作られたロボット。
それが、とある事情で人間達を襲い、フレンズと戦い続けている人間たちと主人公。
そして、主人公は逃げた後に、フレンズの製造工場へと逃げ込む。

そこで、フレンズに殺されたフレンズを制作した天才少女の姿をしたフレンズと出会って・・・。

という感じのプロットが出来ていました。

設定そのものは気にいっていますし、完全に駄目だとは思わなかった。
でも、あと少し足りない要素があったり、主人公ヒロインが確立しなかったり、と出来上がったとしても「それなり」の作品になるくらいかな?と思ったのも事実。

いつか、何らかのアイディアが加わったり、ヒロインや主人公の設定に変化が見いだせれば、もしかしたら復活もあり得る・・・のかな?

 

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