シナリオ編<オマケ4>「ボツシナリオ(4)泣き虫妖精と雨男」 第108回ウォーターフェニックス的「ノベルゲーム」のつくりかた

第108回 シナリオ編<オマケ4>「ボツシナリオ(4)泣き虫妖精と雨男」
執筆者:企画担当 ケイ茶


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他の会社さんや、個人のクリエイターがどうやってノベルゲームを作っているのかはわかりません。
ここに書かれているのは、あくまで私達「ウォーターフェニックス」的ノベルゲームのつくりかたです。


ケイ茶です。
ボツフォルダの中に、私が書いたシナリオ(途中まで)「泣き虫妖精と雨男」がありましたので、ひっそりとここで公開しておきます。
元々はフリーゲームとして出せればよいかな?と思っていたのですが、途中で私が忙しくなったため放置した作品です。

ストーリーとしても王道を目指したつもりなので、特に意外性やとんでも設定、どんでん返し等はありませんので。


;★タイトル未定 ひよりシナリオ「泣き虫妖精(ひより)と雨男」

;◆起
;▼学校

頭が痛い……。
凄く、楽しみに、していたのに……。

楽しみ?
憎い、憎い……。
………。

;▼時間経過

【校内放送】
「全校生徒の皆さんにお知らせします。本日、予定しておりました球技大会は大雨のため中止になりました」
「繰り返します……」

【雨見 空】
「はぁ……」

【クラスメイト】
「あぁっ! またかよ。本当にお前がメンバーに入っていると毎回雨だな」

【クラスメイト2】
「雨見君って本当に雨男なんだね」

また、か。
どうして、僕はこんなに雨男なのかな?

僕が風邪や体調不良で休むと晴れになるんだよね……。

【クラスメイト】
「あ~あ、ゲーセン行くか」

【クラスメイト2】
「私も行っていい?」

【クラスメイト1】
「ああ、いいぜ」
「これで、晴れていたら最高だったんだけどなぁ」

【雨見 空】
「………」

;▼帰り道、田舎

はぁ……。
またいつものように嫌みを言われちゃった………。

どうして、今日も雨なんだろう?
……。
………。

落ち込んで居ても仕方ない!
雨男には雨男の良いところがあるはず。
それに、よく見ると晴れてきたし!
さーて、帰ったら新作ゲームやろうかな!

【???】
「てる~」

あれ?
なんか、変な声が聞こえた?

【???】
「てる~」

川辺の方かな?
近づいてみる。

そこには、一人の少女が座っていた。

01a

【???】
「また、迷惑かけちゃったてる~」

【???】
「ひっく、ひっく、どうして」

あっ、また雨が降ってきた。

【雨見 空】
「ねえ、泣いているみたいだけど、どうしたの?」
「それに、傘持っていないみたいだから1本貸すね」

【???】
「えっ? 貴方、ひよりの事みえてる?」
01b

【雨見 空】
「見えてるけど。それより、濡れちゃうよ」

と、僕が傘を渡すと、不思議そうに傘を受け取る少女。
【???】
「ありがとうてる~」

【雨見 空】
「君の名前は?」
【天宮 ひより】
「ひよりの名前は、天宮 ひよりって言うてる」

01d

【雨見 空】
「ひよりちゃんって言うんだね。どうして泣いていたの?」

【天宮 ひより】
「泣いていたのは、人に迷惑をかけてしまったからてる」

【雨見 空】
「迷惑って? 君が何かしちゃったの?」

【天宮 ひより】
「ひよりが泣くと、雨が降り出すてる」

えっ?
泣くと、雨が降る!?

もしかして、僕と同じようにこの子は雨女?

【雨見 空】
「それは、本当に辛いだろうね。その気持ちわかるよ」

【天宮 ひより】
「私の気持ちがわかるてる?」

【雨見 空】
「うん」

【天宮 ひより】
「名前なんていうてる?」

【雨見 空】
「僕の名前は、雨見 空。雨を見る、そしてそらの空だよ」

【天宮 ひより】
「あまみ、そら。てるるっ! なんか雨を呼びそうな名前てる」

【雨見 空】
「うん、僕も君と同じで、雨を降らせることが出来る。雨男なんだよ」

【天宮 ひより】
「それ、本当てる?」

【雨見 空】
「うん、今日も、球技大会が雨になっちゃったんだ。多分、僕がメンバーになったから」

【天宮 ひより】
「それくらい、誰だってあるてる。雨見のせいじゃないてる」

【雨見 空】
「ううん、それだけなら、ね……」

「僕が参加しようと思った、遠足、体育祭、イベントは全部、雨で中止か延期」
「で、僕が休んだ時は快晴! 延期して僕が行かないと、それまた快晴!」
「もう、嫌になっちゃうよ」

ああ、思い出すだけで辛くなる。
なんで、この子に言っちゃったんだろう?
同じ境遇みたいだからかな?

【天宮 ひより】
「ごめんなさいてる。簡単に言いすぎちゃったてる」

「雨見が雨男だって言うなら、他の人と一緒の時はどうてる?」

【雨見 空】
「そうだね。確かに、絶対に雨って事はないかなぁ」

【天宮 ひより】
「きっと、その人は晴れ男さんか、晴れ女さんてるっ!」

【雨見 空】
「そうなんだけど、でもねぇ……」

【天宮 ひより】
「また、落ち込んでる?」

【雨見 空】
「それがね、普段は良いんだけど。例えば、女の子とのデートの約束の日」

【天宮 ひより】
「おお、雨見はモテる~?」

【雨見 空】
「あははっ、まあ、何人か遊びに誘ったことはあるんだ。でもね、毎回デートが雨なんだ……」

【天宮 ひより】
「ううっ、せっかくのデートが雨だと台無してる」

【雨見 空】
「だよね? で、最初のうちは良いんだけど、いざ告白すると『貴方みたいな雨男とは付き合えません』だって」

【天宮 ひより】
「ううっ、それは酷過ぎるてるっ! ひよりまで悲しいてる~、ひっく、ひっく」

どうやら、僕の話を聞いて本当に悲しんでくれてるみたいだ。
だって……

【雨見 空】
「あっ、雨が強くなってきた」

さっき、言っていたのは本当だったんだね。
この子の事、信じたい。

しかし、これじゃ、傘があっても意味ないや。
傘をしまって、雨を全身に受ける。

ああ、冷たい。
冷たくて気持ちいい。

【天宮 ひより】
「ひっく、ひっく、うわぁぁ~~~ん」

ひよりは一人、数分間泣き続けた。

【雨見 空】
「どう? 落ち着いた」

【天宮 ひより】
「っく、も、もう大丈夫てる」

雨も小粒に戻ってる。
この子も本当に雨女なんだなぁ。

【雨見 空】
「そういえば、君の場合はどうなの? やっぱり、雨ばっかり?」

【天宮 ひより】
「ひよりの場合は……」

あっ、まずかったかな。
また、思い出し泣きしちゃうかもっ?

【天宮 ひより】
「うっ、うわぁぁ~~~ん」
やっぱり……。

もうズブ濡れだし、どうでもいいけどね。

【天宮 ひより】
「聞いて欲しいてるっ! ひっく、ひっく」

【雨見 空】
「うん、ゆっくりで大丈夫だから、落ちついて話してくれれば良いよ」

【天宮 ひより】
「ひよりねっ、今日っ、ちっ、近くの小学校のっ、運動会に行ったてる」

ああ、そういえば、今日は第二小学校の運動会だったなぁ。

【天宮 ひより】
「ひよりもねっ、皆が走っているのを見て、面白そうって思ったんだてる」

「っく、それで……他の子と一緒に走ったてる」

【雨見 空】
「でも、走る事ができたなら、雨が降ってなかったんだよね?」

【天宮 ひより】
「っく、ひっく。そうてる。 その時は降ってなかったてる」

【天宮 ひより】
「一緒に走って、っ、楽しかったてる。でも、ひより、最後に石に躓いて転んじゃったてる」
「それで、泣いちゃったてる」

【天宮 ひより】
「その後は、大雨が降りだしたてる。ひよりが泣きやんだ時には、もう皆いなかったてる」

【雨見 空】
「……、そう。それはひよりちゃんも辛い思いをしたんだね」

【天宮 ひより】
「ひより、とってもいらない子なんだてる。いっつも、皆に迷惑かけてる」

【雨見 空】
「そんなっ………」

事ないよ。
とは、言えなかった……。
だって、僕も皆に迷惑かけている。って思うから。

【天宮 ひより】
「ひよりがね、泣くのは、痛い時や悲しい時だけじゃないの」

「時々、雨見みたいにわたしが見えている人がいるてる」

【雨見 空】
「うん、皆ひよりちゃんの事、心配したんだと思うよ?」

【天宮 ひより】
「前もね、小さい子が私の事気付いて、アメ玉をくれたてる」

「ひより、アメ玉大好きで、凄く嬉しかったてる」

【雨見 空】
「その子、とっても優しいね!」

【天宮 ひより】
「ひより、本当に、本当に嬉しくて嬉しくて、泣いちゃったてる」

あっ、そうか……。
じゃあ、やっぱり。
【天宮 ひより】
「後は、今といっしょてる」
「大雨が降って、その子はお母さんに連れられて、いなくなったてる」
「ひよりは、その場所で一人になったてる」

【雨見 空】
「……」

あれっ?
泣いたら、雨が降るんだよね。
じゃあ、簡単な事じゃないか。

【雨見 空】
「ひよりちゃんっ!」

【天宮 ひより】
「てるっ?」

【雨見 空】
「ぶにゅっ」

思いっきり、顔を歪ませる。
雨見流、ザ・福笑い!
これで、僕は近所の一躍ヒーローになったんだから。
子供限定だったけどね。

【天宮 ひより】
「あはっ、あははははっ。 その顔、っ、変っ、顔が潰れてる~」
やった! 受けた!
天気はどうかな?
01e
うわっ、凄い。
さっきまで雨だったのに、雲一つない快晴!
今更だけど、この子何者なんだろう?

【雨見 空】
「ひよりちゃん、空を見てごらん」

【天宮 ひより】
「あっ、凄く、晴れてるっ!」

【雨見 空】
「うんっ。 ひよりちゃんの笑顔が雨を退治したんだよっ!」

【天宮 ひより】
「ひよりの、笑顔てる?」

【雨見 空】
「うん! ひよりちゃんは雨女じゃないよ。 むしろ、笑って雨を退治できる、晴れ女だよ!」

【天宮 ひより】
「ひより、晴れ女てる?」

【雨見 空】
「うんうん!」

ひよりちゃんの顔が笑顔でいっぱいになる。
あっ、でもこれ以上褒めるのはやめておこう。
ただでさえ蒸し暑いのに、このままじゃ、熱中症になりそうだよっ………。

【雨見 空】
「あっ、もうこんな時間だ。じゃあ、僕は帰るね」

【天宮 ひより】
「えっ、もう帰っちゃうてるっ……?」

泣きそうな顔で僕を見つめてくるひよりちゃん。
泣いちゃだめだよ?

【雨見 空】
「うん。濡れちゃったし、そろそろ家に帰る時間だから」

【雨見 空】
「傘、あげるよ。僕何個も持ってるし」

【天宮 ひより】
「ありがとう。大切にするてるっ! それで……」

【雨見 空】
「?」

【天宮 ひより】
「明日も、ひより、この時間にここで待ってる! だから、もし良かったら……」

ふふ、
ひよりちゃんって寂しがりなのかな?

【雨見 空】
「うんっ! 僕、部活も入ってないし、また明日も来るよ!」

「だから、ひよりちゃんも今日はすぐに帰って、着替えて風邪ひかないようにね?」

【天宮 ひより】
「てるっ! また、待ってる!!」

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【雨見 空】
「じゃ、また明日! ばいばい!」

【天宮 ひより】
「てるてる~~~!!」

ひよりちゃんはそう、大きな声で僕の姿が見えなくなるまで見送ってくれた。
なんか、ちょっと恥ずかしいな。
でも、とっても清々しい気持ち。

;◆承

;▼次の日、帰り道。

【天宮 ひより】
「雨見~~! 待ってたてる」

僕が、声をかける前に、ひよりちゃんが寄ってくる。
あぁ、そんなに走っちゃ危ないよ?
と、思っていたら。
【天宮 ひより】
「てるっ!?」

転んだ。
手を伸ばしたけれど、間に合わなかった!

【雨見 空】
「ひよりちゃん? 大丈夫?」

【天宮 ひより】
「っ、てるぅっ、ひっく、ひっく」

あぁ、やっぱり泣いちゃったみたいだ。
僕はさっと、ひよりちゃんが持っていた傘を広げる。

そして、自分の分の傘を広げる。

【雨見 空】
「血が出てるね。しっかり、水で流して、消毒しないとね」

【天宮 ひより】
「痛っ、とっても、しみてる~~」

痛がってるけれど、これはしっかりやらないといけない。

【天宮 ひより】
「ひゃっ」

と、ひよりが僕の服の端を掴んでくる。

【雨見 空】
「ほら、もう少しで終わるからね?」

【天宮 ひより】
「まだてる? まだ、終わらないの?」

【雨見 空】
「次に、しっかりふき取って」

【天宮 ひより】
「ううっ」

【雨見 空】
「絆創膏を貼って」

【雨見 空】
「はいっ! これで終わりっ!」

【天宮 空】
「っく、あっ、ありがとうてる」

ひよりちゃんが泣きやんでくれたみたいだ。

【天宮 ひより】
「でも、雨見はいつも、傘や怪我したときの道具、持ってる?」

【雨見 空】
「もちろんっ! 何があっても良いようにね」

【天宮 ひより】
「雨見、とっても備えてるっ!」

「そういえば、持ち物が多いてる?」

よくぞ聞いてくれましたっ!
僕は気分が良くなって、鞄をひよりちゃんの前で開ける。

【雨見 空】
「じゃーん! どうっ!」

【天宮 ひより】
「カン?」

【雨見 空】
「非常食。 魚のカンに、パンのカンに蝋燭が入ったカン」

【天宮 ひより】
「えっと、こっちは何てる?」

【雨見 空】
「それは、ろ過装置が付いたストローだよ」

「例えば……」

僕は、川の水をコップ(これも非常用の持ち物)に入れて、専用の液体をまぜる。
そして、ストローで水を吸って飲んだ。

【天宮 ひより】
「飲めてる?」

【雨見 空】
「うん、美味しい!」

【天宮 ひより】
「ひよりもっ、ひよりも飲みたいてる~~!」

そう言うと、ひよりは僕の手からストローを奪い去り、飲み始める。

【天宮 ひより】
「とっても、美味しいてるる~~!!」

【雨見 空】
「そう、それなら良かったよ!」

【天宮 ひより】
「あっ、ラジオに、携帯電話のバッテリーの予備に、合羽にお守りまで入ってる!!」

【雨見 空】
「ふふふっ、何時、何があるかわからないからね。 日ごろの備えは必要だよ?」

【天宮 ひより】
「準備がいいてるっ!」

【雨見 空】
「……、あっ、まずいなぁ」

【天宮 ひより】
「携帯電話見て、どうしたてるっ?」

【雨見 空】
「この辺、今から数十分後に激しい雨が降るみたいだ」

【天宮 ひより】
「そ、そんな事までわかってる?」

【雨見 空】
「そうだよ。今は色々な情報が携帯端末ですぐにわかるんだからね。 特に雨には敏感になってるかな」

【天宮 ひより】
「また、雨降るてる~~?」
う~ん、また雨が降るなんて嫌だなぁ。
………そうだっ!
これは凄く良い機会なんじゃないのかな?

【雨見 空】
「ねえ、ひよりちゃん」

【天宮 ひより】
「?」

【雨見 空】
「僕たちで、これから降る雨を退治してみない?」

【天宮 ひより】
「出来るてるっ?」

【雨見 空】
「うんっ! ひよりちゃんの力と、僕の力があれば、きっと!」

【天宮 ひより】
「やるてるっ! ひより、頑張る!」

よしっ!
ひよりちゃんも乗り気みたいだ。
これなら、成功したようなものかな?

ここからは僕の頑張りどころだ!
;▼場面転換 時間変更。
【雨見 空】
「ふとんが~、ふっとんだ~~!」

【天宮 ひより】
「あははってるてる~! そのネタ古すぎてるっ!」

そう言ってるわりに、バカ受けしてるしっ!

【雨見 空】
「はいっ! こしょこしょ~~!」

【天宮 ひより】
「やっ、やめるてるっ! わき、わきはダメてるぅ~~」

【天宮 ひより】
「てるっ、てるっ~~」

てるてる言いながら、笑い転げるひよりちゃん。
ひよりちゃんの弱点はワキっと。

あれっ?
近所のおばちゃんが、こっちを見てる。
……、いろいろと誤解されそうなので、ワキ作戦は中止!

【天宮 ひより】
「てるぅ~。ひより、とっても疲れてる~」

笑い転がって、疲れている様子のひよりちゃん。
あれからもう30分は経過している。

【雨見 空】
「ひよりちゃん。上を見て~」

【天宮 ひより】
「あっ! 雲ひとつない、晴れてる~!」

【雨見 空】
「そう、僕たちは!」

【天宮 ひより】
「雨に勝ったてる~~!?」

【天宮 ひより】
「わーい! わーい! 晴れてるっ! 晴れてるる~!」

【雨見 空】
「そういう事っ!」
「二人で頑張った結果だよ! この調子で明日も晴れにしていこうね」

【天宮 ひより】
「て~るる~!」

は~。
疲れた。
でも、雨をやっつけて今日は最高だった。

【雨見 空】
「じゃあ、また明日!」

【天宮 ひより】
「明日もまってる~~」

;▼次の日

……。
マズイ、ひよりちゃんの約束の時間が過ぎちゃってるよ……。

しかも、この雷鳴。
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うう……。
これは、絶対ひよりちゃん怒ってるだろうなぁ……。

でも、本当にひよりちゃんの力って凄いなぁ。
なんか、ひよりちゃんの機嫌とここら辺の天気が同じになってるみたいだし。

僕がどんなに頑張っても晴れにはなった事ないけど、ひよりちゃんにはそれが出来る。
ひよりちゃんって凄いなぁ。
純粋に憧れちゃうし、羨ましい。

あっ、今はそんな事考えている場合じゃなかった!
速くひよりちゃんの所へ行って、謝らないと……。

;▼場面転換

【雨見 空】
「ひよりちゃんっ、ごっ、ごめんっ。はぁっ、はぁっ」

【天宮 ひより】
「………」

……。
雷はさっきより激しくなって、雨も降ってる。
これは、相当怒らせちゃったかも……。

【雨見 空】
「えっと……」

【天宮 ひより】
「ひよりは、今、とっても、怒ってる!」

あぁ……やっぱりかぁ。

【雨見 空】
「ごめんっ! 帰りに先輩に捕まっちゃって、ちょっと図書館まで行ってたんだ」

【天宮 ひより】
「図書館行ったてる?」

あれ?
思ったより、声が優しい気がする。

【雨見 空】
「うん、だから、いつもより1時間遅くなっちゃって、ごめんね」

【天宮 ひより】
「そんな事より、雨見は本読んでる?」

【雨見 空】
「う~ん、最近はあんまり読んでないけれど、昔はよく読んでたかな」

【天宮 ひより】
「それは、なんて本てるっ?」

やけに本の事が気になるみたいだ。

【雨見 空】
「えっと、たしか一番ハマっていたのが『誰がジャン?』っていうファンタジー小説かな」

【天宮 ひより】
「それっ! ひよりも大好きてるる~~!」

【雨見 空】
「えっ、ひよりちゃんも読んだことあるの?」

【天宮 ひより】
「読んだも何も、ひよりが最高に好きな話てるっ! 特に、序盤の方で……」

;▼場面転換 昼~夕方へ

こんな、話すなんてよっぽど本が好きなんだなぁ。

【天宮 ひより】
「で、その時の主人公がてるっ!」

【雨見 空】
「ひよりちゃん」

【天宮 ひより】
「てるっ?」

【雨見 空】
「ひよりちゃんは、図書館いつも行ってるの?」

【天宮 ひより】
「行ってる~! 今日の朝までいたてるっ!」

あれ?
図書館って、朝開いてたっけ?

【雨見 空】
「いつからいたの?」

【天宮 ひより】
「えっと、昨日、雨見と別れた後すぐに入ったてる?」

って事は、夜から朝までずっと?

【雨見 空】
「あのね、ひよりちゃん」

【天宮 ひより】
「てる?」

【雨見 空】
「図書館の開放時間は、夜21時までだよね?」
「追い出されちゃわないの?」

【天宮 ひより】
「うん。でも、誰もひよりの事見えてないてるっ」
そういえば、最初もそう言ってたなぁ。

もしかして、本当に?

【雨見 空】
「じゃあ、試しに、今から行ってみる?」

【天宮 ひより】
「行くてるっ!」

;▼図書館
;わーい図書館だ~という二人でほのぼのする話。その後に、ひよりがこの本が良いな!って持つ描写が欲しい。

【天宮 ひより】
「図書館てる~!」

【雨見 空】
「なんか、本当に図書館大好きなんだね」

【天宮 ひより】
「本がいっぱいてる! あれも、これも全部読みたいてるっ!」

【雨見 空】
「何かお勧めの本ってある?」

【天宮 ひより】
「そうてるね~」

っと、
手を引っ張られて連れて行かれる。

【天宮 ひより】
「これなんてどうてる?」

ひよりちゃんが一冊の本を指さす。

【雨見 空】
「真・ノアの箱舟?」

【天宮 ひより】
「そうてるっ! 有名だから知ってるかもしれないけれど……」

【雨見 空】
「あの、神様が怒って、地球に大洪水をって話だよね?」

【天宮 ひより】
「そうてるっ! でも、この本はちょっと違うんだてるっ!」

【雨見 空】
「えっ、違うの?」

【天宮 ひより】
「基本な同じなんだけどてるっ。 妖精が大活躍するお話てるっ!」

【雨見 空】
「妖精なんて、出てたっけ?」

【天宮 ひより】
「こっちが本当の話って本には書かれてるっ!」

ぱらぱらとめくってみる。
あっ、本当だ。

妖精さんが沢山出てる。

【雨見 空】
「あれ? 妖精が誰かと戦っている?」

【天宮 ひより】
「そうてるっ! 洪水を引き起こす悪い悪魔と戦うてる!」

【雨見 空】
「あはは、なんか、雨男の僕みたいだね……」

【天宮 ひより】
「ってる、別に、そういうわけじゃないてるっ!」

「ほら? この人間の子と妖精の子が協力して、悪魔を退治するてるっ!」

本当だ、二人と、他の妖精たちが悪魔と戦っている絵がある。

【雨見 空】
「最後は悪魔を倒して、晴れになるんだね」

【天宮 ひより】
「そうてるっ! 最後は皆助かって幸せてるっ!」

うん、やっぱり最後が幸せで終わるといいよね。

【雨見 空】
「じゃあ、ひよりちゃん。 逆に、僕のお勧めのこの本はどう?」

本を指さしてみる。

【天宮 ひより
「これてるっ?」】

【雨見 空】
「そう、それ」

【女子中学生】
「キャアっ!」

【雨見 空】
「えっ? どうしました?」

【女子中学生】
「ほ、本が、本が、浮いてるっ」

えっ?
女子中学生が指し示す先ではひよりちゃんが本を持っていた。

【雨見 空】
「あの子が持ってる本ですか?」

【女子中学生】
「あ、あの子って誰です? 誰もいないじゃないですか」

【天宮 ひより】
「あっ、ごめんなさいてるぅ」

そう言うと、ひよりちゃんは本を机の上に置く。

【天宮 ひより】
「やっぱり、この時間は本を読めないてるっ」

もしかして、本当にひよりちゃんの姿って、周りには見えてないのかな?
今の女の子の反応を見る限り、そう考えるしかないよね。

【天宮 ひより】
「ひよりが本を持って歩くだけで、皆驚くてる……」

【雨見 空】
「だから、皆がいなくなった夜に?」

【天宮 ひより】
「そうてるっ! でも、雨見と一緒だったから、つい忘れちゃってたてる」

わかった事。
ひよりちゃんが、最初に言った、人には見えないってのは本当らしい。
って事は、ひよりちゃんは幽霊?

【雨見 空】
「君ってどういう存在なの?」

【天宮 ひより】
「妖精てるっ!」

【雨見 空】
「えっ! 妖精っ!?」

【天宮 ひより】
「そうてるっ!」

えっと、本当に?

【雨見 空】
「ええと、ひよりちゃんは妖精なんだよね?」

【天宮 ひより】
「そうてるっ! 仲間もいるてるっ!」

【雨見 空】
「何の妖精さんなの?」

【天宮 ひより】
「何の妖精だと思うてるっ?」

ぱっと、思い浮かんだ

【雨見 空】
「ひよりちゃんは、泣き虫妖精かな?」

【天宮 ひより】
「違うてるぅぅ!」

【雨見 空】
「えっ!?」

【天宮 ひより】
「天気妖精てるっ!」

天気妖精なんだ……。

普通ならもっと驚くだろうけど、さっきの事と、天気を変えられるのは本当だし。
それに、ひよりちゃんが人を騙すようには思えない。
うん、騙すよりは騙されそうだし!

それに、悪い事なんて絶対にしないと思う。

【雨見 空】
「そっか。 これからは、夜じっくり読んだ方か良いかもね」

【天宮 ひより】
「それが良いてる~」

って、
ひよりちゃんが見えないってことは、普段一緒に話しているのは……
あれ?

僕が一人で喋って、笑っているように見えるってことなの!?
そうか、おばちゃんが僕の方を見ていたのはそういうわけだったのかも。
うん、これからは気をつけよう。

僕は、そう心に誓った。

;▼学校、授業中

【教師】
「で、あるからして、この時に主人公は殺意を持ったと言う事だ」

あぁ、退屈な授業。
今頃、ひよりちゃんは何しているのかな?

そういえば、ひよりちゃんって妖精だから、学校に行く必要もないみたいだ。
でも、いつも川辺で遊んでいたり、のんびりしているのも退屈そうだなぁ。
今度ひよりちゃんと一緒に、どこかに行くのも良いかも!

【教師】
「では、次のテキストを、山田。読んでみてくれ」

【???】
「てるっ、てるっ!」

てるっ?

【???】
「雨見~、いるてる?」

って、えええぇ!

【天宮 ひより】
「あっ! いたてるっ! 雨見に会いたくなって、来ちゃったてるっ!」

【雨見 空】
「えええっ!?」

【教師】
「こら! 雨見、授業中は静かにしなさい」

【雨見 空】
「す、すみません」

うぅ、怒られちゃったよ……。

【天宮 ひより】
「てる? 雨見、怒られてるっ?」

【雨見 空】
「ひよりちゃんのせいだからね」

と、小声でひよりちゃんに文句を言ってみる。

【天宮 ひより】
「それより、一緒に遊ぶてるっ」

【雨見 空】
「ごめんね、ひよりちゃん。今、授業中だから、一緒に遊べないんだ」

【天宮 ひより】
「てるぅっ、ちょっとだけでも、駄目てる?」

悲しそうな声で、ひよりちゃんが訴える。
そっ、そんな目で見ないでよ。
一緒に遊ぼうっ! って言いたくなりそうだよ。

でも、ここは心を鬼にして………。

【雨見 空】
「うん、これは僕にとって大事な授業だからね」

【天宮 ひより】
「わかったてる、一人で遊ぶてる」

そう言うと、ひよりちゃんは僕から遠ざかる。
……さて、僕は授業に集中しないとね!

【天宮 ひより】
「てるっ! てるる!」

【教師】
「だから………おおっ? 誰だ、こんな所に落書きしたやつは?」

って、ひよりちゃんっ!?
何やってるの!

黒板にチョークで絵を描いているひよりちゃん。
ばれないように、小さく描いているのはわかるけど……。

【天宮 ひより】
「楽しいてるっ!」

ああっ、今度はカーテンの裏に隠れてクルクル回ってる!

【天宮 ひより】
「て~る~る~~っ」

あっ、風だと思われてカーテンを縛られてる。
………って、駄目だ駄目だ、集中しないとっ!

【天宮 ひより】
「てるる!」

うわっ!
そのスイッチは駄目っ!

【天宮 ひより】
「てるっ!」

明りが消えちゃったよ。

【教師】
「んんん? さっきから、誰だっ? お前ら、子供かっ!」

「気分を害した。今日の授業はここまでだ。後は自習していなさい」

怒った教師は早足で教室から出て行ってしまう。
はぁ……。

【天宮 ひより】
「てるる~」

【雨見 空】
「ひよりちゃんっ! 君のせいで、皆が迷惑してる。 お願いだから、もう僕達の邪魔しないでくれる?」

【男子生徒】
「ん? 雨見、お前何言ってんだ?」

【雨見 空】
「あっ、なんでもないよ」

【天宮 ひより】
「……ひより、邪魔してる?」

【雨見 空】
「そう!」

【雨見 空】
「遊ぶのはいいんだ。でも、邪魔はいけないよ」

【天宮 ひより】
「また、ひより、迷惑かけちゃったてる……」

【雨見 空】
「授業終わったら、遊んであげるから。ね?」

【天宮 ひより】
「邪魔しちゃったてるっ……」

【雨見 空】
「あっ! ひよりちゃん、待って……」
……ああ、行っちゃった。

ちょっと、言い過ぎたかな。後で謝らないといけないな。

【女子生徒】
「あ~、また雨? 今日、傘持ってきてないのに」

【男子生徒】
「俺も」

皆の視線が痛い。
でも、僕にはわかる。
この雨は僕のせいじゃない。

………。
これは、ひよりちゃんが泣いているって事だよね……。
ひよりちゃんはただ、僕に会いに来ただけ。
ちょっと寂しくて、会いに来てくれただけだったんだよね。

それを、僕が『邪魔だ』なんて言ってしまったから……。

……。
………。

そうだ。
帰りに、アメ玉買っていこう。
それで、許してくれると良いな。

;★ここに、雨が強くなっていく描写を入れる!! 授業に手がつかなくなる。外を見る。

;▼時間経過

【男子生徒】
「おいおい、ヤバくね?」

【男子生徒2】
「うわぁ、土砂降りってレベルじゃないぞ? 台風みたいじゃないか」

【教師】
「こりゃあ、場合によっては警報が出るかもしれないな」

っ! きっと僕のせいだ。

はやくっ、はやく、ひよりちゃんに会いにいかないと。
そして、許してもらわなきゃ!

あれっ?
でも、何かおかしい気がする。

ひよりちゃんが、泣くのはわかる。
でも、この雨は異常だ。

もしかして。
ただ泣いているだけじゃないとしたら……?
何か、大変な事が起こっているとしたら?

【雨見 空】
「すみませんっ! 体調が悪いので、早退します」

【教師】
「待ちなさい、雨見君。 外は雨が……」

【雨見 空】
「はぁっ、はぁっ!」

ひよりちゃんっ!

【雨見 空】
「はぁっ、はぁっ!」

待って、てっ。
今すぐに、行くからっ!

;▼川辺

【雨見 空】
「ひっ、ひよりっ、ちゃんっ?」

どこなの?
ひよりちゃん、どこにいるの?

【雨見 空】
「ひよりちゃんっ! ごめん、僕が悪かったよ。 だからっ、姿をっ、表してよっ!」

ひよりちゃん、いつもいるのは、あのあたりだ!
川の水位がかなり上がってる!

どこ?
どこにいるの?

【雨見 空】
「はぁっ、ひより……ちゃん………」

声が枯れてきちゃった……。
このままじゃ、ひよりちゃんに、僕の、声が届かなくなっちゃう!

【天宮 ひより】
「てる~~~っ! 助けて欲しいてる、雨見っ、雨見ぃぃっ」

えっ?
今の、もしかして、ひよりちゃんの声?

はっ、はっ、
僕の、呼吸音がうるさいっ!

落ち着け。
いったん、呼吸を整えて、雨の音を無視して。

……。
………。

そして、もう一度集中して、耳をすませる。

【天宮 ひより】
「雨見ぃぃっ、助けっ、欲しいっ、てる」

あっちだ!
橋の向こう側から声が聞こえた。

まっててね!
ひよりちゃんっ!

;▼橋の向こう側

【雨見 空】
「ひっ、ひよりちゃんっ! ど、どうしてそんなところにっ?」

【天宮 ひより】
「あっ、雨見ぃっ。 来てくれたてるっ?」

良く見ると、ひよりちゃんと、子猫?

【天宮 ひより】
「この子がっ、川に流されてるのを見つけたてるっ! ひよりっ、自分のせいだと思って」
「助けようとしたてるっ。でも、ひよりも、一緒に流されちゃったてるぅ……」

ひよりちゃん、馬鹿だよっ!
なんで一人でそんな無茶をしたんだっ!

僕に、助けを呼べば良かったのにっ。
……、
違うっ、僕の、邪魔をしないために?
だから、ひよりちゃんは一人で、あの子を助けようとして?

ああ、まったく!
全部、終わったらひよりちゃんにはお説教だっ!

っ、ひよりちゃん達が掴んでいる木がっ、もう限界そうだ。

このままじゃ、確実にひよりちゃんと子猫は濁流に飲み込まれてしまう!
もう、迷っている場合じゃない!

足が震えてる。
いけっ、雨見空。

【天宮 空】
「……、ひよりちゃん。僕が助けにいくからっ! もうちょっと待ってて!」

【天宮 ひより】
「あっ、危ないてるっ! 雨見まで流されるてる! 誰か、助けを呼んで、この子だけでもっ、てるっ!?」

あっ、木がっ!
……!

よ、良かった。
まだ、耐えてる。
でも、もう長くは持たない!

【雨見 空】
「ひよりちゃん。安心して。こう見えても、僕水泳は得意なんだ!」

よしっ!
ここまで言ったら、後は実行あるのみっっっ!!

【雨見 空】
「っ、川の流れが速いっ」

このまま一気に泳いで、向こうに行けるかっ?

行けるか?
じゃないっ。
二人を助けるために、行くんだっ!

【雨見 空】
「ひよりちゃん、大丈夫っ?」

【天宮 ひより】
「なっ、なんとか、大丈夫てるっ! それより、この子が」

【子猫】
「にゃ、にゃぁ……」

【天宮 ひより】
「大丈夫。大丈夫てる! もう少してるっ!」

もうちょっと、
もうちょっとだ。

【天宮 ひより】
「雨見っ! お願いてるっ!」

ひよりちゃんが、子猫を僕へ渡してくる。

【雨見 空】
「よしっ!」

子猫を抱きかかえた!

【雨見 空】
「じゃあ、ひよりちゃんもっ!」

もう片方の手を、ひよりちゃんに近づける。

【天宮 ひより】
「駄目てるっ! ひよりも一緒は無理てるっ! ひよりはまだ大丈夫てる」

【雨見 空】
「でもっ!」

【天宮 ひより】
「大丈夫って、言ってる! 空。お願いてる! その子をまずは、てるっ!」

【雨見 空】
「わかった。ひよりちゃん、しっかり掴んで。待ってるんだよ?」

【天宮 ひより】
「わかったてるっ!!」

【雨見 空】
「じゃあ、行くよ? ちょっと苦しいかもしれないけれど我慢してね」

【子猫】
「ニャーー」

よしっ。
後は、この子を連れて泳ぎきるだけだっ!

……。
水の流れが速い。

でも、大丈夫。
これならっ、なんとか、なりそうだっ!

……。
………。

【雨見 空】
「ぶはっ! はぁっ。はあっ」

【子猫】
「………」

【雨見 空】
「君っ? 大丈夫?」

【子猫】
「にゃ、にゃあ」

良かった!

【天宮 ひより】
「空! 凄いてるっ!」

後は、ひよりちゃんだ!

あっ!
ひよりちゃんの、持っている木がっ!

折れるっ!

【天宮 ひより】
「てるっ!? てるるっ!」

まずいっ!

【雨見 空】
「ひよりちゃ~~んっ!」

ひよりちゃんが、流される。

迷っている暇はない!

【雨見 空】
「っ、はあ、はあ」

必死で邪魔な水を払っていく。
ひよりちゃんっ。
どこ?

どこだっ?

【天宮 ひより】
「てるっぅ!」

あっちだ!
水を、払えっ! 払えっ!

邪魔だっ! 邪魔だっ!

水を無我夢中でかきわける。
まだっ、まだだ!
もっと、もっと急がないと!

……。
………。

必死で動かす手が、何かに触れる!
ひよりちゃんの、手だっ!

水が邪魔をしてくる。
僕たちの手を離そうとしてるの?

でも、何があっても僕は、ひよりちゃんの手を離さない!

……。
………。

;★ここにもう少し入れる。手を掴んで、助かるまでの間の物語。ひよりのことばとか。

【天宮 ひより】
「空っ! 大丈夫てる?」

……
ひよりちゃんの声?がする。
僕の事心配してくれているのかな……。

ごめんね、今ひよりちゃんの言葉に返事をする余裕なんてないんだ。

【天宮 ひより】
「空! 前、木が流れてるっ!」

ひよりちゃんの声を聞いて、前を注視する。
僕の向かう先から木が流れてきている。

頭がぼーっとして、何も考えられない。
でも、このままじゃ木に当たっちゃう。

そうすると……どうなる?
きっと、このまま泳ぐ気力はなくなっちゃうだろうし、僕が掴んでいるものを離しちゃう……。

……。
【天宮 ひより】
「空っ! 右、右に避けるてるっ!」

僕の手が大きく揺さぶられる。
……ひよりちゃん?

そうだ、ここで僕が諦めちゃったらどうなる?
今僕が掴んでいるのはひよりちゃんの小さな手。

この手を離しちゃったら、僕は一生後悔する事になるんじゃないの?

それだけは嫌だっ!

ひよりちゃんの言葉を信じて、必死に右に移動する。
……。

よかった、木に当たらずにすんだみたい。

あとは、まっすぐ泳ぎきるだけ。
腕が痛い、間隔もなくなってきた……。

でも、必死に泳ぐしかない!
ひよりちゃんを助けるんだ………。

……。

………。

▼場面転換

ズルズル……。
ズルズルズル………。

あれ?
僕、どうなったのかな。

冷たい。
これは雨?
冷たい雨が多分体に降り注いでいる。

ズルズル……。
ズルズルズル……。

そして、何かに引きずられている間隔。
体が動かないし、目を開ける力も残っていない。
でも、なんか心地いい気がする……。

ズルズルズル……。
ズーー……。

冷たい雨が体に降り注がなくなってきた。
それに、引きずるような音もしない。

……。
暖かい?
僕の隣で温かい何かがもぞもぞ動いている気がする。
なんだろう?
確かめたい、でも、体が言うことをきかない。

……。
………。

駄目だ、猛烈な眠気が襲ってきた。
……。
………。

;▼場面転換、真っ黒

【天宮 ひより】
「空っ! 空っ! 大丈夫てる?」

ゆっさゆっさ。
何かに揺すられている気がする。

ゆっさ、ゆっさ。
どんどんっ!

どんどんっ!……?

【天宮 ひより】
「空っ! はやくっ、起きるてるっ! もう、朝てるっ!」

【雨見 空】
「っうう」

;▼場面転換、空。雨

僕が目を開けると、ひよりちゃんが近くで飛び跳ねていた。

【雨見 空】
「ひよりっ、ちゃん? ここは?」

【天宮 ひより】
「そっ、そらぁっ! てるっ!」

【雨見 空】
「あれっ? 雨、風、水……全部なくなってる」

;★ここはどこ? 屋根があるところまでひよりがひきずってきた。エピソード!!

【天宮 ひより】
「空! 本当に、凄いてるっ! 空が、ひよりも、男の子も助けたてるっ!」

そうか、僕が、二人を……。
良かった……。

;▼場面転換。空、夜。

目を再びあける。

【天宮 ひより】
「おはようてるっ!」

【雨見 空】
「おはようって、もう夜じゃない?」

【天宮 ひより】
「起きた時は、いつでも『おはようございます』ってる!」

【雨見 空】
「そうなの?」

【天宮 ひより】
「てるる~?」

ちょっと、考えて

【天宮 ひより】
「ひよりがいつも外で歩いてると、皆『おはようございます』『お疲れ様』って言ってる!」

なるほど。
確かに、大人はいつでもおはようって言ってるかも?
なんか変な感じがするけど、それが普通なのかな。

【雨見 空】
「それより、子猫は?」

【天宮 ひより】
「大丈夫てるっ! ひよりが、安全な場所まで連れて行ったてる」

【雨見 空】
「お疲れ様。 それに、僕が起きるまで、まっててくれてありがとう」

【天宮 ひより】
「空、なかなか起きなくて心配したてる」

【天宮 ひより】
「でも、良かったてる!」

あれっ?
そういえば

【雨見 空】
「いつから、僕の事、空って?」

【天宮 ひより】
「てるる? そう言えば、てるっ!」

少しクルクル回って、

【天宮 ひより】
「空。凄く、カッコ良かったからてるっ!」

【雨見 空】
「なっ、なんか。 恥ずかしいなぁ」

【天宮 ひより】
「恥ずかしいてる?」

まあ、でも……

【雨見 空】
「それ以上に、嬉しいけどね!」

【天宮 ひより】
「てるる~~! それなら、良かったてるっ!」

【雨見 空】
「そうだ、ひよりちゃん」

【天宮 ひより】
「てる?」

【雨見 空】
「えっと、朝ひよりちゃんに、邪魔って言ってごめん」
「ひよりちゃんが、泣いて出てった後、言いすぎたって思って……」

【天宮 ひより】
「そんな事気にしてたてる? 別に、謝る事じゃないてる!」
「むしろ、ひよりこそ、空の邪魔しちゃって、ごめんてるっ!」

【雨見 空】
「僕の方こそ、ごめんっ」

【天宮 ひより】
「ごめんなさいてるっ!」

【雨見 空】
「お互いに、おあいこって事にしようか?」

【天宮 ひより】
「それが良いてる!」

そうしないと、二人して、謝り合戦になりそうだから。

【雨見 空】
「そういえば、あの子猫は最初からあんな所にいたの?」

【天宮 ひより】
「多分、水かさが少ない時に渡ったんだと思うてる。 でも、ひよりが泣いて、川の水が増えて、帰れなくなっちゃったみたいてるぅ」

あっ
だから、自分のせいだと思っていたのか。
泣きそうな表情でひよりちゃんが答える。

そうか、自分のせいだって思っちゃているんだ。

【雨見 空】
「ひよりちゃんが悪いわけじゃないよ」

【天宮 ひより】
「でも、ひよりがいなければ……」

【雨見 空】
「ひよりちゃんのおかげで僕がかっこいい所見せる事ができたし、ひよりちゃんの優しさもわかったんだ」
「だから、自分のせいだって、悲しまないでいいんだよ」

【天宮 ひより】
「本当てる?」

【雨見 空】
「もちろん! それにね……」
「ひよりちゃんは、笑顔の方がいいよ!……とっても似合っているから」

【天宮 ひより】
「空がそう言ってくれるなら………」
ちょっと、後ろを振り向いて、気合いを入れるひよりちゃん。

「てる! 笑顔てるっ!」

;★ここで雨が止んで、晴れる!!<演出>

ひよりちゃんは、僕ににっこりを微笑んでくれた。
うん、やっぱり笑顔のひよりちゃんは良いな。

【雨見 空】
「さて、もう夜だし、そろそろ帰らないと」

【天宮 ひより】
「ひよりも、とっても疲れたてる~」

そういえば……

【雨見 空】
「ひよりちゃんって、どこに住んでいるの?」

【天宮 ひより】
「てる~?」

えっ、それって悩むこと?

【天宮 ひより】
「最近は、図書館。 でも、今は閉まっているから入れないてるっ! だから、今日は橋の下てる~」

は、橋の下って……。

【雨見 空】
「女の子が、そんな所で寝ちゃよくないよ」

【天宮 ひより】
「でも、ひより、基本的に誰にも見えないてる」

【雨見 空】
「それは、そうかもしれないけど……」

でも、ねえ?
ひよりちゃんが、まともな場所に住んでいないって事を知っちゃうと放っておけないよ。

だったら

【雨見 空】
「僕の家にくる?」

【天宮 ひより】
「空の家てる?」

【雨見 空】
「うん、一人暮らしの狭いアパートなんだけどね」

【天宮 ひより】
「空の家……! 行くてる~~!」

あっさり、決定で良いのかな?

;▼空の家、アパートの一室

【天宮 ひより】
「てるてる~~! ここが空の家てるっ!?」

ひよりが僕の部屋の中を走り回っている。
あっ、ものを物色しはじめた!

【天宮 ひより】
「てるっ! このカップ麺、期限きれてるっ!」

【雨見 空】
「えっ!」

あっ、本当だ。
気付かなかったよ……。

って、それよりもっ!

【雨見 空】
「ひよりちゃん。 まず、服、乾かそうか?」

部屋中が水だらけになってるし……。

【天宮 ひより】
「そういえば、冷たいてるっ!」

……だよね。

【雨見 空】
「今、お風呂入れたから、先に入ってていいよ」

【天宮 ひより】
「空は一緒に入らないてる?」

【雨見 空】
「入らないよっ! はいっ、タオル!」

【天宮 ひより】
「入るてる~」

バスタオルをばっさばっさと振り回し、ひよりちゃんは元気にお風呂に入っていく。
は~、僕も今のうちに服だけ着替えておこう。

……。
………。

【天宮 ひより】
「てる~~」

あっ、ひよりちゃんが出てきたみたい。

【雨見 空】
「どう? 疲れも取れた?」

【天宮 ひより】
「とっても、暖かくて、ぽかぽかてる~」

ガラッ!

って、えええ~~。

【雨見 空】
「えっと。 ひよりちゃん……」

【天宮 ひより】
「てる?」

【雨見 空】
「服……は?」

【天宮 ひより】
「今、干してる~」

あっ。
そうか……

【雨見 空】
「今、ひよりちゃんの服、用意するから」

【天宮 ひより】
「別に、この部屋暖かいから大丈夫てるっ!」

大丈夫てるっ!
じゃなくてっ!

えっと、とりあえずこれでいいやっ!

【雨見 空】
「とにかくっ、前隠して、で、これ着てねっ!!」

【天宮 ひより】
「空の顔、真っ赤てる~! 面白いてるっ」

【雨見 空】
「お願い、はやく……服、着てね?」

【天宮 ひより】
「わかったてる」

ふぅ、やっと、着てくれたみたいだ。

【天宮 ひより】
「ぶかぶかてる~」

【雨見 空】
「ごめんね、僕の服しかないから」

【天宮 ひより】
「空の服てるっ! そういえば、空のにおいがするてるっ!」

【雨見 空】
「えっ? 確か、しっかり洗ったはずだけど……」

【天宮 ひより】
「ううん、空のとっても良いにおいてる!」

うう、そう純粋に言われれうと恥ずかしいよ。

【雨見 空】
「じゃあ、僕もお風呂入ってくるね」

【天宮 ひより】
「行ってらっしゃいてる~」

と、僕を風呂場まで送ってくれる。
手まで降ってくれてるよ。

;▼風呂上がり部屋。

【天宮 ひより】
「てるる~、てるる~」

【雨見 空】
「そういえば」

【天宮 ひより】
「てる?」

【雨見 空】
「ひよりちゃんって、普通の人からは見えないんだよね?」

【天宮 ひより】
「そうてる! 時々、動物には見えてるみたいだけど、空みたいに見える人はいないてる」

う~ん、
となると

【雨見 空】
「前、図書館で、ひよりちゃんが本を持った事があったよね」

【天宮 ひより】
「あの時は、驚かせちゃったてる」

【雨見 空】
「という事は、今ひよりちゃんが僕の服を着てるよね? それって他の人から見たらどうなるのかな?」

【天宮 ひより】
「多分、見えないと思うてる」

「ひよりが覆いかぶさったもの、身につけているもので驚かれた事はないてる」

【雨見 空】
「そうなんだね。それじゃあ、本とか、小物とか、手に持ったものは見えるのかな?」

【天宮 ひより】
「そうだと思うてる」

「例えば、てるっ」
といって、ひよりは時計を持つ。

【天宮 ひより】
「ひよりが今持っているこの時計は、空以外から見たら宙に浮いていると思われるてる」

【雨見 空】
「まるで怪奇現象だね。でも、安心したよ。それなら、ひよりと僕が歩いた時、服で驚かれることはないわけだね」

【天宮 ひより】
「安心して良いてる!」

【雨見 空】
「それなら良かったよ」

;◆転
;▼時間経過

【テレビ】
「次のニュースをお伝えします」

「……県森奥村では水不足が深刻になっております。発表によりますと、先月末より雨が全く降らず……」

【雨見 空】
「ひよりちゃん、ちょっと見て」

【天宮 ひより】
「てる?」

携帯ゲーム機で遊んでいたひよりちゃんが、ゲームを置き、テレビを見る。

【テレビ】
「村民102名は、外部より生活水の提供を受けているものの、生活にはまとまった雨が必要との事……」

「現時点で雨が降る目途はたっておらず、水不足は深刻な問題となっているようです」

「それでは、次は県内のニュースをお伝え……」

【天宮 ひより】
「雨が全然降ってないてる?」

【雨見 空】
「うん、そうみたいだね」

【天宮 ひより】
「もしかして、てるっ!」

【雨見 空】
「うん、僕も多分ひよりちゃんと同じ事思った」

「ねえ、明日学校も休みだし、一緒にその村に行ってみない?」

【天宮 ひより】
「行くてるっ! ひより達なら雨を降らせることができるてる」

【雨見 空】
「だねっ! そうと決まったら今日はゆっくり休んで、明日に備えようよ!」

【天宮 ひより】
「てるるっ!」

あっ、ひよりちゃんもやる気だね!
僕も明日は頑張らないと!

今日はゆっくり寝よう………。

;▼次の日、森奥村 天気は晴れ(雲ひとつない)

……。
あ、暑い。
ジメジメした暑さじゃなくて、からっとした暑さを感じる。

【雨見 空】
「暑いね……ひよりちゃんは大丈夫? 気分悪かったら言ってね」

【天宮 ひより】
「てる?」

あれ?

【雨見 空】
「暑くないの?」

【天宮 ひより】
「これくらいへっちゃらてる。空は弱いてる!」

【雨見 空】
「す、凄いなぁ。羨ましいよ」

【雨見 空】
「それにしても、本当に雨降りそうにないよね」

【天宮 ひより】
「ひよりと空が来たのに雲ひとつ無いてる……」

【雨見 空】
「じゃあ、試しにやってみようか?」

【天宮 ひより】
「やってみるてるっ!」

僕たちは気合いを入れて、道具を取り出す。

【雨見 空】
「じゃあ、いくよ! ひよりちゃん」

【天宮 ひより】
「いつでも良いてるっ!」

よしっ!
気合いを入れて声を出そう。

【雨見 空】
「それは、とっても昔の、悲しい物語であった。ある所に……」

;▼時間経過、夕方

【天宮 ひより】
「ひっく、てるっ。すごくっ、感動したてる~~」

ひよりちゃんが、感動している。
あと一歩だ!

【雨見 空】
「その話には続きがあってね、結局、女の人も助からなかったんだよ」

【天宮 ひより】
「それは、あまりにも可哀相てるっ……っく、てるぅ」

「うわぁぁ~~んてるぅ~」

ひよりちゃんが大泣きする。
さあ、これで雨雲が出てくるはず。

;▼時間経過

【雨見 空】
「う~ん……」
「雨、降らないね……」

【天宮 ひより】
「てるぅ~、ひっく」

【村民1】
「お前さん、さっきからずっと何をしておるのかえ?」

【雨見 空】
「えっと、雨が降らないかと思って……」

【村民1】
「空をみなされ。雲ひとつない晴天じゃて。先月からずっとこんな感じじゃよ」

【雨見 空】
「そうなんですが……」

【村民1】
「わしらもほとほと困っとるんじゃ」

【雨見 空】
「昔から、この地方は雨が降らないんですか?」

【村民1】
「そうじゃのぉ。昔から雨が少ない地域じゃった。じゃが、ここ数年は特に少ないのぉ」

【雨見 空】
「そうなんですが……」

【村民1】
「明日の、雨降り祭で降ってくれればよいんじゃが……」

【雨見 空】
「雨降り祭?」

【村民1】
「代々この村に伝わる祭りでのぉ。雨乞いが元になったと言われとる」

「皆、張り切って明日の準備をしておるよ」

【雨見 空】
「そうですか、雨が降ると良いですね」

【村民1】
「そういえばお前さん、見ない顔じゃが、どこから来たんじゃ?」

【雨見 空】
「バスで都心の方から来ました」

【村民1】
「そんなに遠くから、この村に何をしにきたんじゃ? 何も見るところはなかろうに」

【雨見 空】
「ええと、自主勉強で雨に関係する事を学んでいるので、ニュースで聞いて来ました」

【村民1】
「そりゃあ、熱心なことで。じゃが、この時間じゃと最終バスもなかろうに」

しまった、つい夢中になって忘れてた……。

【雨見 空】
「このあたりで、泊れる場所ってありますか?」

【村民1】
「ないのぉ」

【雨見 空】
「そ、そうですか……」

【村民1】
「もし、困っとるようじゃったら、それ、そこの小屋で良ければ使っても構わんがの」

【雨見 空】
「いいんですか?」

【村民1】
「ええぞ、後で布団と蝋燭、食べ物くらいじゃったら持っていくからの」

【雨見 空】
「ありがとうございます、お世話になります」

【村民1】
「困った時はお互いさまじゃ。良かったら明日の祭りにも出てみなされ」

【雨見 空】
「はい!」

;▼時間経過、夜 外

【天宮 ひより】
「疲れたてる~」

【雨見 空】
「お疲れ様、ひよりちゃん」

【天宮 ひより】
「結局、雲が増えただけだったてるぅ」

【雨見 空】
「ひよりちゃんが、あんなに泣いていたのにね……」

【天宮 ひより】
「でも、ひより諦めないてるっ! 明日も頑張るてる!」

【雨見 空】
「うんっ! 明日も頑張ろうよ」

って言っても、僕は応援するくらいしかできないのかな……。
僕とひよりちゃんが行くだけで雨が降ると思ったけれど、大間違いかなぁ。

;▼小屋の中

【雨見 空】
「うわぁ」

クモの巣張ってるし、長年使ってなさそうな部屋だ。

【天宮 ひより】
「てっ、てるぅ!」

【雨見 空】
「何かあった?」

【天宮 ひより】
「出たてるっ!」

【雨見 空】
「む、ムカデっ!」

【???】
「あははっ。君たち面白いね」

【天宮 ひより】
「てるっ?」

【雨見 空】
「えっ? 誰か、いるんですか?」

【???】
「あれっ? 君にも僕の事見えるんだ?」

って事はもしかして?

【雨見 空】
「妖精さん?」

【???】
「そっ、ボクは乾燥の妖精」

【雨見 空】
「えっと、雨見 空です。 そして、その子が泣き虫妖精のひよりちゃん」

【天宮 ひより】
「てるぅ~! 天気妖精てるっ!」

あっ、普通に間違えちゃった……。

【天宮 ひより】
「名前はなんていうてるっ?」

【???】
「大地 そうじろう」

【天宮 ひより】
「そうじろうてるっ! 仲間てるっ! 宜しくてる」

【大地 そうじろう】
「う、うん。宜しく」

【雨見 空】
「ところで、ここって君の家なの?」

【大地 そうじろう】
「そっ。 だから、君たちが朝から変な事やってるのずっと見てたよ」

【天宮 ひより】
「変なことじゃないてるっ!」

【雨見 空】
「そうだよ。僕たち、雨を降らそうとしていたんだ」

【大地 そうじろう】
「あははははっ」

【天宮 ひより】
「なんで笑うてるっ!?」

【大地 そうじろう】
「ごめんごめん、でもね、雨は当分降らないと思うよ」

【雨見 空】
「どうしてなの?」
「もしかして、君が乾燥妖精だから?」

【大地 そうじろう】
「そっ!」

【天宮 ひより】
「皆が、雨が降らないってこまってる!」

【大地 そうじろう】
「それは人間の勝手さ。 ボクは行かなきゃいけない所があるからね」

【雨見 空】
「それと、どう関係があるの?」

【大地 そうじろう】
「その場所に行く前に、ここで命令されるまで待機してなきゃいけないんだよね」

【雨見 空】
「誰からの命令?」

【大地 そうじろう】
「それは言えないね」

【雨見 空】
「ひよりちゃんも妖精として、何かわかる事ある?」

【天宮 ひより】
「てるぅ? ひよりにはわからないてる」

【雨見 空】
「そっか」

【雨見 空】
「そうじろう君。君が居る限り、雨が降らないってこと?」

【大地 そうじろう】
「そうだろうね。君たちの雨乞いがボクの力を超えない限りは無理だろうね」

【天宮 ひより】
「ライバルてるっ!」

【雨見 空】
「うん。そうかもね、しかも乾燥だなんて……厄介だね」

【大地 そうじろう】
「まあ、そういうわけだから、諦めるんだね」

【雨見 空】
「ちょっと、どこいくの?」

【大地 そうじろう】
「今日は君たちにこの家、貸してあげるよ。じゃあね、精々頑張ってみることだね」

【天宮 ひより】
「行っちゃったてる」

【雨見 空】
「うん……」

【天宮 ひより】
「空、明日こそ雨降らせるてるっ!」

【雨見 空】
「うんっ! そのために来たんだからね。でも、多分、今日と一緒の方法じゃだめだと思う」

【天宮 ひより】
「何か、良い方法があるてる?」

【雨見 空】
「多分だけど、ひよりちゃんが今日泣いたことで、雨雲がやってきた」

【天宮 ひより】
「がんばったてるっ!」

【雨見 空】
「だから、ひよりちゃんはそのままで良いと思うんだ」

【天宮 ひより】
「今日と同じてる?」

【雨見 空】
「問題は、僕の雨男の力が出てないって所だと思うんだよね……」

【天宮 ひより】
「空も泣けば良いてるっ!」

ひよりちゃんが、本を持ってくる。
どれも、ひよりちゃんが好きな感動長編みたいだ。

【雨見 空】
「う~ん。僕の場合は、泣いたからって雨が降るわけじゃないと思うんだよね」

【天宮 ひより】
「空の力はどんな時に発揮されてるっ?」

そうだ。
それが、わかればひよりちゃんの力と合わさって、雨を降らせることができるはず。

ちょっと考えてみよう……

;▼時間経過

【雨見 空】
「そうかっ!」

【天宮 ひより】
「何か、わかったてる?」

【雨見 空】
「うん! 今までの事を考えてみるとね」

「僕がいて、雨が降るのってイベントとか行事の時ばっかりなんだよね」

【天宮 ひより】
「最初にそう言ってたてるねっ」

【雨見 空】
「それで、なんでイベントとか行事かな? って考えてみたら答えが出たよ」

【雨見 空】
「確証はないんだけど、全部、僕が前日に楽しみにしていたものだったんだよね」

【天宮 ひより】
「わくわくてる?」

【雨見 空】
「そう、眠れないくらいにわくわくしてたら、次の日大雨だったりね……」

【天宮 ひより】
「なるほどてるっ!」

【雨見 空】
「だからさ」

「明日あるっていうお祭り、一緒に思いっきり楽しもうよ!」

【天宮 ひより】
「てっ、てる~~! 楽しみてるっ!」

【雨見 空】
「うんっ! もし、これで明日雨だったらそれで良いし、雨じゃなくても、楽しめば雨になるかもしれないし」

【天宮 ひより】
「どっちにしても、楽しみながら雨が降るなら、それが一番てるっ!」

【雨見 空】
「だね!」

明日はひよりちゃんと一緒にお祭り!
そう考えると、どんどんワクワクしてきたかも!

ああ、楽しみだなぁ。

;▼時間変化

……ズキン。
頭が痛いっ。

お祭りが楽しみ、そのはずなのに、憎い。
……ズキッ。
また、頭に響く。

……。

;▼お祭り会場

【天宮 ひより】
「どうてる~?」

【雨見 空】
「うんっ! とっても似合ってるよ」

【天宮 ひより】
「嬉しいてるっ!」

【雨見 空】
「それにしても、そうじろう君が、浴衣なんて貸してくれるとは思わなかったね」

【天宮 ひより】
「てる~! お祭り行くって言ったら、持ってきてくれたてるっ」

僕たちの味方をすることはできないみたいだけど、敵じゃないって事なのかな?

【雨見 空】
「それで、どこから行こうか?」

って、あれ?
ひよりちゃん、どこ!?

【天宮 ひより】
「てる~~!」

あっ、いた。

;▼金魚すくい

【おじさん】
「どう? やってみる?」

【雨見 空】
「えっ、あ、はいっ!」

【天宮 ひより】
「楽しみてるっ!」

ひよりちゃんにこっそりと金魚すくいの網を渡す。

【雨見 空】
「さっ、どうぞ」

【天宮 ひより】
「てるっ!」

ひよりちゃんの手に合わせて、僕も手を動かす。
ちょっと変かもしれないけど、これでごまかせるはず?

【おじさん】
「あ~、残念っ!」

【天宮 ひより】
「てるぅ。 難しいてる……」

【雨見 空】
「はい、ひよりちゃん」

綿あめを渡す。

【天宮 ひより】
「ふわっふわてるっ!」

【雨見 空】
「食べてみて、きっと気にいると思うよ」

【天宮 ひより】
「んん~。 とっても、とっても甘くてっ、美味しいてるっ!」

綿あめにかぶりつくひよりちゃん。
ああっ

【雨見 空】
「ほっぺについてるよ」

【天宮 ひより】
「てるっ? ありがとうてるっ」

ぺろっ。

【雨見 空】
「うんっ! 美味しい」

【天宮 ひより】
「残りは空が食べるてるっ!」

【雨見 空】
「いいよ、ひよりちゃんが食べて」

【天宮 ひより】
「本当にいいてるっ?」

【雨見 空】
「うん」

【天宮 ひより】
「全部食べちゃうてる」

【雨見 空】
「ど~ぞ」

【天宮 ひより】
「絶対絶対、後悔しないてるっ?」

【雨見 空】
「もちろんっ!」

よっぽど、綿あめが気にいったみたいだ。

【天宮 ひより】
「てっるる~~!」

嬉しそうに綿あめにかぶりつくひよりちゃん。
顔に沢山ついて、綿あめみたいになってるよ?

まっ、まあ……いいか。
うん。
幸せそうだし。

;▼場所移動

【雨見 空】
「う~ん、でもなかなか雨降らないね」

【天宮 ひより】
「雨……てるっ?」

あれ?
あまりにも楽しくて、本来の目的忘れちゃってる?

まあ、いいんだけどね。

【天宮 ひより】
「はっ! てる。 雲、沢山でてるっ!」

思い出したかのように上を指さすひよりちゃん。
でも、確かに昨日より雲が出てる気がする。

あと一息かな?

【雨見 空】
「じゃあ、次は射撃行ってみようか」

【天宮 ひより】
「てる~~!」

;▼場所移動

【放送】
「……さて、本日の祭りの締めくくりに、雨降り踊りを行います。参加希望の方は中央までお集まりください」

【天宮 ひより】
「もうおしまいてるっ?」

【雨見 空】
「うん、そうみたいだね」

【天宮 ひより】
「雨、結局降らなかったてる」

【雨見 空】
「ううん。まだだよ、ひよりちゃん」

【天宮 ひより】
「でも、てる……」

【雨見 空】
「一緒に、踊ろう?」

ひよりちゃんの手をひっぱる。

【天宮 ひより】
「てるっ! ひより、空と踊るてるっ!」

;◆結

;▼場所移動
;踊りながら

【雨見 空】
「ねえ、ひよりちゃん」

踊りながら、僕はひよりちゃんに問いかける。

【天宮 ひより】
「てる?」

【雨見 空】
「今日、楽しかった?」

【天宮 ひより】
「てるっ! とっても、楽しかったてる!」

そうか、ひよりちゃんも楽しんでくれたんだね。

【雨見 空】
「僕も、ひよりちゃんと一緒にいろいろ回れて、凄く楽しかったよ」

【天宮 ひより】
「てる?」

【雨見 空】
「あっ……」

お祭りの音が聞こえなくなった。

【村人達】
「あっ、雨が降ってるぞ!」

【天宮 ひより】
「雨、降ってる」

【雨見 空】
「うん、降ってるね」

なんか、実感がわかない。

【大地 そうじろう】
「まさかなぁ。本当に降らせちゃうとは」

【天宮 ひより】
「そうじろうも来てたてるっ?」

【大地 そうじろう】
「ん? ああ、ちょっと祭りを見にね」

「でも、すごいなお前達。ここまで強力な雨、ボクがいる時に降らせるなんて……」

【雨見 空】
「雨、降ったんだよね?」

【大地 そうじろう】
「ああ、降ってるね」

【天宮 ひより】
「降ってる! 降ってるっ!」

【雨見 空】
「っつ」

【天宮 ひより】
「空?」

【雨見 空】
「っ、すごくっ…」

どうしよう、涙が出てきちゃった。
ちょっと恥ずかしいな。

【天宮 ひより】
「空っ! どうしたてるっ? お腹痛いてるっ?」

【雨見 空】
「ううんっ、違うっ」

【天宮 ひより】
「ひっ、ひより、どうすればよいてるっ? 何したらいいてるっ?」

【大地 そうじろう】
「落ち着きなよ。こいつ、泣いてるだけだ」

【天宮 ひより】
「てるっ? そうてるっ?」

【雨見 空】
「っ、うんっ。 すごくっ、嬉しくてっ」

【天宮 ひより】
「っく、なんか、ひよりも、泣きたくなってきたてるっ! っく」

【大地 そうじろう】
「おいおいおいおい、何、二人して泣いているんだよ……」

初めて、僕の雨男っぷりが人の役に立った。
今までは周りに迷惑かけてばっかりで、嫌な思いしかしなかったのに。

今回は違う。
村の人が皆、喜んでる。

それに、ひよりちゃんだって喜んでくれてる。
っ。
うん、そうだ。

僕と、ひよりちゃんの二人で、初めて、雨に勝ったんだ!
初めて、人の役に立つ事ができたんだっ!

良かった!
本当に、良かった!

;▼帰りの電車。次の日の朝

【天宮 ひより】
「すーっ、すーっ」

ひよりちゃんは疲れちゃったのか、もうぐっすり眠っていた。
僕も疲れた。

あ、でも今日は学校に行かないとなぁ。
朝一の電車でも遅刻になっちゃうから、怒られそうだけど。

でも、怒られてもいいや。
今はそれよりも、達成感と、疲れがかなりあるから。

【天宮 ひより】
「すーっ、すーっ」

【雨見 空】
「ひよりちゃん。本当にありがとうね。君のおかげで、僕も自信を持てたよ」

【雨見 空】
「僕一人じゃ絶対にできなかったと思うから……」

ひよりちゃんの頭をなでる。

【天宮 ひより】
「すーっ……空? 雨、雨降ってる!」

ふふっ、
昨日の夢を見ているのかな?

【雨見 空】
「ひよりちゃん、これからもずっと宜しくね」

そして、困っている人をまた一緒に助けようね?

;第一部 完


最後まで読んでくれた方ありがとうございました。
一応これで第一部が終わり、第二部では世界の滅亡との戦いが・・・!というプロットがありました。

確か、空が雨を降らして、それを止めるひより・・・?ごめんなさい、昨年に作ったプロットなのであまり覚えていないですが・・・。
hi2

 

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