シナリオ編<オマケ5>「ボツシナリオ(5)魔王&勇者モノ<1>」 第109回ウォーターフェニックス的「ノベルゲーム」のつくりかた

第109回 シナリオ編<オマケ5>「ボツシナリオ(5)魔王&勇者モノ<1>」
執筆者:企画担当 ケイ茶


bro5

他の会社さんや、個人のクリエイターがどうやってノベルゲームを作っているのかはわかりません。
ここに書かれているのは、あくまで私達「ウォーターフェニックス」的ノベルゲームのつくりかたです。


ケイ茶です。
今日もボツシナリオを公開しちゃいます!
(この企画自体に需要があるのかは謎ですし、読んでいる方がいるのかも不明ですが・・・ブログのネタには使えます)

・・・それなりに、凹む企画なんですけどね。
企画者としては、ボツ企画を大量に作り出した・・・という事とイコールになりますので。
シナリオ担当としても、書いたシナリオが全部ボツという悲しい企画がこれになります。

それでも、なんとなくボツになったシナリオは「確かに、これはボツか」と納得できるものもあるんじゃないかと思うので、オープンにしているわけです。
もし、ボツにした中で、これ実は面白いんじゃない!?という企画があっても、基本的には復活はしないと思いますので、ご了承お願いします。

完全にはない、と言いきれませんけれど・・・。

という事で、今回は「魔王&勇者モノ」という事で、RPGっぽい内容かな?
RPGで作るのもありかも。とかちょっと考えていました。

それでは、読みたい方どうぞ!

「魔王&勇者モノ<1>」・・・ちなみに次回以降も続きます。(ブログの更新が楽になります)


;▲主人公視点

魔物の目を通じて見えたそれに、衝撃が走った。

ボロの布きれを身にまとい、毒消し草を腰に携えて木の棒を構えて魔物と対峙している。

あれは――勇者だ。

Lvは21。

成人勇者の初期Lvが20だという事をふまえると、あれはすでに何体かの魔物を殺して経験値を得た後だという事になる。

@主人公
「……なんという事だ」

@主人公
「我が魔物たちを、あのような木の棒で嬲り殺しにするとは……っ!」

唇を噛み締めながら、偵察用魔物との通信を断ち切る。

すると、足元にいた魔物Lv5が飛び跳ねた。

@魔物Lv5
「ぴきゃー!」

@主人公
「落ち着け。勿論、あのようなものを野放しにはせぬ」

@主人公
「勇者抹殺部隊A、前へ出よ!」

我の声に従い、魔物の一団が進み出た。

@魔物たち
「……!」

@主人公
「よし。戦闘準備は整っているようだな」

@主人公
「ならば、ただちに抹殺に向かう」

「行き先は、はじまりの村周辺の街道沿いだ。我が後に続け」

@魔物たち
「!」

姿勢を正した魔物たちを一瞥し、我は空間転移魔法レッツェルライゼ(謎の旅)を唱えた。

;▲はじまりの村周辺

@主人公
「たしか、この辺りのはずだが……」

@魔物Lv1
「ぴぎゃああっ!」

っ! あれは、魔物の悲鳴……!?

耳にしたそれを頼りに視線をめぐらせる。

そうして我の目にうつったのは、拳を振り上げる勇者と、その前で砂のように消えていく魔物の姿だった。

@勇者
「よし、これでLv22だ!」

@主人公
「くっ……!」

……間に合わなかった、か。

あのように消滅してしまっては、いかに我の魔力を与えても生き返らせる事はできぬ。

我にできるのは、せめて仇をとる事ぐらいだろう。

そう思い、勇者を見据える。

@主人公
「……見つけたぞ、勇者よ」

@勇者
「ん? お前は……」

@主人公
「我は、魔王主人公。魔物たちを統べ、この世界を支配する者」

@勇者
「なっ! 魔王だって……!?」

@主人公
「貴様は、我が忠臣たる魔物を苦しめ、殺した」

@主人公
「その罪、命をもって償うがいい!」

;◆戦闘

勇者Lv22があらわれた!

勇者Lv22「ヒッ! ま、魔物がこんなに……!?」

勇者は怯えている!

勇者Lv22「嘘だろ、こんなの……っ」

勇者は逃げ出そうとした。

しかし、逃げられない!

主人公「……」

主人公は、力をためている。

勇者Lv22「くそっ、やるしかないって事か……」

勇者Lv22「それなら、まずは一番弱そうな魔物から……!」

主人公「させぬ」

主人公のアビリティ・挑発が発動!

攻撃対象が主人公にうつった!

勇者Lv22の攻撃! 主人公に0のダメージ!

勇者Lv22「ヒィッ! そ、そんな……!」

勇者Lv22「ほ、本当に魔王だっていうのか……!?」

勇者Lv22「なんでこんな平和な村の近くに、魔王なんかがい、」

魔物Lv100の攻撃! 勇者Lv22に9999のダメージ!

勇者Lv22「ぐあああぁっ!」

勇者Lv22を倒した!

魔物Lv100の攻撃! 勇者Lv22に9999のダメージ!

勇者Lv22は すでに死んでいる。

魔物Lv100の攻撃! 勇者Lv22に9999のダメージ!

勇者Lv22は すでに死んでいる。

魔物Lv100の攻撃! 勇者Lv22に9999のダメージ!

勇者Lv22は すでに死んでいる。

魔物Lv100の攻撃! 勇者Lv3に9999のダメージ!

勇者Lv22は すでに死んでいる。

主人公「魔の奔流よ――闇と共に来たれ」

主人公は 究極魔法ダークネス・エルプティオ(闇の爆発)を唱えた! 勇者Lv22に99999のダメージ!

勇者Lv22は 跡形もなく消えさった!

主人公は 勝利した!

主人公は 経験値を0手に入れた。

主人公「目的は達した。……帰還する」

;◆戦闘終了
;▲魔王会議室

@主人公
「ハァ……」

仇は討った。殺された魔物の弔いも済ませた。

だが、そうすぐに気分が切り替わるものでもない。

目の前で消えていく魔物の目が、脳裏に焼きついて離れなかった。

あれは、何度見ても慣れる光景ではない。

だからこそ、天敵たる勇者には注意をはらっていたつもりだったが、まだ甘かったらしい。

ふたたび溜め息を吐くと、魔物Lv5が擦り寄ってくる。

@魔物Lv5
「ぴぎゃー?」

@主人公
「黙れ。慰めなどいらん」

@主人公
「今回の事は、我の怠慢が原因だ」

勇者の出現を察知するのが遅れた、というのが1つめの失態。

勇者が出現した場所にLvの低い魔物が徘徊していた、というのが2つめの失態だ。

原因はわかっている。しかし、対処法はどうすればよいものか……。

……ううむ。

1人で考えていても埒があかぬ。

今日は丁度、会議の日だ。時間は少し早いが、繋いでみる事としよう。

@主人公
「……これより、定例の魔王会議を始める」

@魔物たち
「ぴぎゃ!」

我が立ち上がると、心得た魔物たちは即座に動き出す。

そして、室内に鏡が立ち並んだ。

その数が127である事を確認し、我はそれらに魔力を込める。

@主人公
「具現化せよ、ハエレティクス・ゲート!(異端者の扉)」

我が声と共に魔の力が拡散し――127のうち、1枚の鏡が煌めいた。

常のように他の魔界と通じた事に、安堵の息を吐く。しかし。

;▲他の魔界 鏡ごし

@主人公
「……む?」

鏡越しにうつるのは異界の風景だけで、その世界の魔王――マオウAの姿がみえない。

嫌な予感がした。

@主人公
「マオウA。……応えよ、マオウA!」

@マオウA
「その声は……主人公、か……?」

@主人公
「そうだ。少し相談したい事ができたのでな」

@主人公
「常の時間よりは少し早いが、扉を開いたのだ」

@マオウA
「そうか。……この時宜に我が魔界への扉を開けてくれた事、嬉しく思う」

@マオウA
「最期に……お前と話せれば良いと、そう思っていたところだ」

@主人公
「……最期とは、どういう、意味だ」

@主人公
「それに……なぜ、姿を現さぬ」

@マオウA
「……すまん。鏡は、高いところにおいていたのでな」

@主人公
「鏡の位置がどうしたというのだ」

@マオウA
「もはや両足を失い、浮遊するだけの魔力もない。……今の我では、手がとどかんのだ」

@主人公
「な……っ!」

@マオウA
「主人公よ」

@マオウA
「我が魔王城は、敵の……勇者の手に落ちた」

@主人公
「貴様は……何を言っているのだ」

魔王城が、勇者の手に落ちただと? 両足も、魔力もないだと?

そのような事があるものか。

@マオウA
「……フ、ハハ。ハハハ、ハッ」

@マオウA
「なぁ、主人公よ。覚えておるか。貴様が初めて我が魔界への扉を開き、言葉を交わした時の事を」

@主人公
「……突然、なんだ」

@マオウA
「あの時、我らは言ったな。『魔王たるもの、勇者に殺されるなどあるはずがない』と」

@マオウA
「だが……それは間違いだったようだ」

@マオウA
「我は、負けた。……勇者に、負けたのだ……っ」

@主人公
「笑えぬ冗談はやめよ」

@主人公
「貴様は、勇者に対して万全の準備を整えていただろう」

そうだ。マオウAは我と同じように、勇者が出現した途端に屈強な魔物を送り込み、すぐに抹殺していた。

魔王城の中にも数多の罠を仕掛け、階層毎に強力な結界と魔物を用意し、マオウA自身も数え切れぬ程の魔物に守られていたはずだ。

@主人公
「その守りが打ち破られる事がないと、自慢していたではないか……!」

@マオウA
「……万全など、なかったのだ」

@マオウA
「あの勇者を前にしては、我が守りなどなんの意味もなかったのだ!」

@主人公
「それは、どんな勇者なのだ」

@マオウA
「……あの勇者は、何の前触れもなく現れた」

@マオウA
「そして、現れたその瞬間。我も知らぬ魔法を唱え――数秒後、我が送り込んだ精鋭達は塵と消えた」

@マオウA
「精鋭のLvはすべて、100だった。それが50体だ。防御力も高く、様々な魔法や技を習得していた」

@マオウA
「それが、すべて。声を発する事もなく消滅したのだ」

@マオウA
「……そこからは、もう何もわからん。勇者の移動速度が速すぎて、我の千里眼では追う事ができなかった」

@マオウA
「ふと気がついた時には、勇者は我が城の中にいた」

@マオウA
「我の魔物を殺していた」

@マオウA
「我の前に立っていた」

@マオウA
「魔王である我を見て、恐怖せず。かといって、憎しみをこめる事もせず」

@マオウA
「なんの感情も無い目で我を見て、我が両足を消し去り、魔力を吸い取った」

@マオウA
「そして、『取り残したアイテム探したら戻ってくるから、そこで待っていろ』と。……そう言って、出て行った」

@主人公
「なんだ、それは……」

ありえぬ。マオウAの発言が、理解できぬ。

今の話を信じろというのか。そのような事が、実際にマオウAの身に起きたというのか。

そんな勇者が、存在するというのか。

@マオウA
「……信じられぬのは無理もない。我とて、夢でもみているような気分だ」

@マオウA
「だが……これは事実。……ほれ。勇者の足音が、聞こえてきおった」

@主人公
「な……っ! マオウAよ、すぐに逃げるのだ!」

@主人公
「否。魔力がないのだったな。ならば、我がかわりに転移魔法を、」

@マオウA
「それができぬ事は、お前が一番よくわかっているだろう?」

@主人公
「く……っ。だが……!」

@マオウA
「我は死ぬ。しかし、せめてあの勇者の秘密を探ってみせよう」

@マオウA
「お前は、そこで静かに我を見守っておれば良い」

@主人公
「同胞の死を、ただ見ておれというのか!?」

@マオウA
「そうだ。……頼む、主人公よ」

@マオウA
「最早、我にできるのはこの程度なのだ」

@マオウA
「最期に少しでも、同胞の……お前の役にたつ情報を残したいのだ」

@マオウA
「だから、ただ、見ていてくれ」

@主人公
「っ……」

このような言い方をされては反論もできず、口を閉ざす。

すると、それとほぼ同時に人影が見えた。

@勇者
「待たせたな」

これが……その、強いという勇者なのか。

@勇者
「今、話し声がしたが……まだ魔物が残っているのか?」

@マオウA
「……」

@勇者
「ふーん。だんまりか。……まぁ、めぼしいボスは全部倒したからいいか」

@勇者
「じゃあ、あとは魔王をサクッと殺して、」

@マオウA
「待て、勇者よ」

@マオウA
「殺される前に、ひとつだけ問いたい事がある」

@勇者
「……なに?」

@マオウ
「お前はなぜ、この地に生まれた瞬間からそのような強さを有していたのだ?」

@勇者
「僕の強さの秘密?」

@勇者
「僕が強いのは、周回プレイしたからだ」

@マオウA
「しゅうかいぷれい……? それは、一体なんだ!?」

@勇者
「知らなくていいだろ、そんなの。リアルを持ち出されると興醒めする」

@マオウA
「りある……?」

@勇者
「あー。でも、今回ははじめからあまり熱中できなかったなぁ」

@勇者
「武器屋防具を揃えたり、Lvを上げたりする必要もなかったし。アイテムだって集めただけで使う場所ないし」

@勇者
「ここまで強くなると、逆につまらないかも」

@マオウA
「お前は、何を言っておるのだ……?」

@勇者
「……んー、まぁいいか。とりあえず、魔王を倒して」

@マオウA
「グ、アアァッ!」

@勇者
「はい、ゲームクリア。っと」

;▲魔王会議室

@主人公
「マオウA……」

そこにあるのは、すでにただの鏡だ。もう、マオウAの声は聞こえぬ。

マオウAは、死んだのだ。

@主人公
「ハエレティクス・ゲート」

先ほどと同じように魔力をこめ、鏡に向ける。

だが、それが煌く事はない。残りの126枚の鏡も、そこにあるだけだ。

@主人公
「……魔物よ」

@主人公
「覚えているか。かつて、128の魔王が一堂に会したあの時を」

@魔物Lv5
「ぴぎゃ」

@主人公
「この場で、様々な意見を交えたものだったな」

昔は、魔王の定例会議というものがあった。

会議といえど堅苦しいものではなく、それぞれが好き勝手に発言するだけで、自由なものだった。

しかしそれでも、楽しかった。様々な情報が交錯した。

勇者一行に仲間として潜り込む計画をたてた魔王がいた。人間が勇者を殺すように仕向けようとした魔王がいた。

魔物の育成に重点をおいた魔王もいれば、魔物や勇者が如何にして出現するのかという謎を、解明しようとする魔王がいた。

自らの技を磨き上げ、他の魔王に伝授するものもいた。

それが今は――皆、いない。

@主人公
「最初に消えたのは、勇者をペットにしようとしていた魔王だったか」

@魔物Lv5
「ぴぎゃー……」

@主人公
「次に消えたのは、たしか、街の破壊を楽しんでいた魔王だったな」

魔王が減れば減るほど、それをあざ笑うかのように勇者の出現率も増えた。

そうしてまた1人、また1人と、魔王が死んだ。

そして――。

@主人公
「先程、マオウAも死んだ」

@主人公
「……」

@主人公
「ハエレティクス・ゲート」

@主人公
「……ハエレティクス・ゲート」

……やはり、反応は無いか。

@主人公
「我は……ついに、1人になってしまったのだな」

@魔物Lv5
「ぴぎゃ!」

@主人公
「ああ。お前達がいる事は、我とて理解している」

@主人公
「だが、魔王は我だけだ」

魔物と多少の意思の疎通はできるが、言葉は交わせぬ。

それに、魔物は同胞というよりも守り慈しむべきものだ。そういう意味で、対等ではない。

我と同じ悩みをもち、同じ感覚を共有するものは、もうおらぬ。

すべて――勇者の手によって殺されたのだ。

@主人公
「おのれ、勇者め……!」

先程見た勇者の姿が頭にうかぶ。

わけのわからぬ事を言い、嘲るようにしてマオウAを殺した勇者。

あの勇者は、魔王を殺した事で村人たちに崇められてでもいるのだろう。

その様を考えるだけで、腸が煮えくり返る思いだった。

@主人公
「く……っ」

@魔物Lv5
「……ぴぎゃ?」

@魔物Lv5
「ぴ! ぴぴぴ、ぴぎゃー!」

@主人公
「……どうした」

@魔物Lv5
「ぴぎゃ!」

問いかけると、魔物は一方向へと尾を向ける。

我は、それを追うように視線を向けて、

@主人公
「……これは」

息を呑んだ。

;▲★ヒロイン視点

――また、死ねなかった。

ぼやけた天井を見ながら、そんな事を思った。

@ヒロイン
「……あー。なんか後頭部が痛い。倒れた時にぶつけたのかなぁ」

フローリングの上で自殺未遂なんてするもんじゃない。

今度からはクッションを用意してからやろうと心に決めて、立ち上がる。

鏡を覗き込むと、首にはくっきりと荒縄の跡が残っていた。

我ながら痛々しい。

両親に見つかったら、また何かを言われるだろうか。それとも、見なかったフリをされるだろうか。

……まぁ、どっちでもいいか。

今わかるのは、僕はまた死ぬ事ができなかったという事だ。

@ヒロイン
「……期待してたわけじゃないから、いいんだけどさ」

どうせ、今回もそうだろうと思っていた。だから色々考えるだけ無駄だ。

@ヒロイン
「自殺の事は一旦諦めて、さっきやったゲームの事でもブログに書こうかな」

うんうん。と1人でうなずいて、僕はパソコンの画面に目を向ける。

『僕は、入手したばかりの伝説の剣・アポカリプスを持ち上げた』

『それはずっしりとした重みが有ったが、不思議と手に馴染んだ』

『眩い光を放つ刃に感嘆の息を吐きながら、指をすべらせる。――刹那』

『暗黒の波動を感じて振り返ると、この階層の主であろう魔物がそびえ立っていた』

『しかしその鮮烈な邪眼を目にしても、私に恐怖はなかった。否。恐怖など、在るはずがないのだ』

『暗黒の微笑を口に刻んだ僕の動きは、ただ一つ』

『一閃。それだけだった』

『その流星の如き動きと煌きは、瞬きの間に終わり――僕が剣をおさめた時、魔物は声も出さずに絶命していた』

@ヒロイン
「……やっぱり、いいなぁ」

我ながら良い文章だ。惚れ惚れする。これぞ勇者の冒険。

また1人でうなずいていると、パソコンの画面上に新たな通知が来ている事に気がついた。

;以下同じ
@ヒロイン
「1件の新着コメント……?」

このブログにコメントが来るなんて、初めてだ。

一体、なんだろう。スパムだろうか。

@ヒロイン
「えーっと。まず、名前は……え?」

『名前 魔王主人公』

@ヒロイン
「なにこれ。魔王って……魔王って、ねぇ?」

@ヒロイン
「ま、いいや。内容は、っと……」

『我は魔王』

『勇者ヒロインよ。貴様はすでに我の掌中にとらえられている』

『我が動けば、貴様の命を狩ることなどたやすい』

『必要以上に苦しみたくなければ、今すぐに己が手で命を絶つがいい』

@ヒロイン
「……こういうの、やめてほしいなぁ」

たしかに、このブログの名前は【勇者の冒険記】。

記事の内容も現実の僕ではなく、【RPGの世界で冒険する勇者】が記したものとして書いている。

よくいう、ロールプレイ。なりきり、というものだ。

でも、これは完全に独り言であって、特に反応を求めてはいない。

だから。

@ヒロイン
「コメント削除、と」

邪魔なものは消すだけだ。

@ヒロイン
「……うん。これでオッケー」

綺麗さっぱりなくなったコメントにうなずいて、立ち上がる。

;▲自室

パソコン画面の右下に表示された時間からすると、今は深夜2時13分。

そろそろ、食事を取るべき時間だ。

@ヒロイン
「……」

音を立てないように、気をつけながら部屋の扉を開ける。

お母さんとお父さんは……よし、いない。

かすかにイビキが聞こえてくる事からすると、数部屋先の寝室で眠っているんだろう。

うん。いける。

僕は自分をはげますようにもう一度うなずいて、息を殺しながら歩き出した。

;▲自室

@ヒロイン
「……ぼそぼそしてる」

冷蔵庫にあったフライドポテトを手早くとって、自室に戻ってきた。

でもこれ、とにかく美味しくない。

ラップもされずに時間の経ったポテトは乾燥しきったうえ、冷めて固くなっている。

これじゃあまるで、塩のついたスポンジを食べているみたいだ。

@ヒロイン
「……残すなら、せめてハンバーガーにしてくれればいいのに」

自分達だけ食べるのはズルい気がするから、せめてポテトだけでも残しておこう。――そんな、両親の考えが伝わってくるようだ。

気が利くのか、利かないのか。

手についた塩を舐めとりながら、ぼんやりとパソコンの多面に視線をうつす。

すると、また新着コメントの通知が来ている事に気がついた。

しかも、その内容は――。

『名前 魔王主人公』

『まさか、我が魔術の刻印を消し去るとはな。貴様、並の勇者ではないな』

『しかし、この程度で調子に乗っているのではあるまいな?』

『我の真の力は、こんなものではない』

『もう一度言う。これは警告だ。命を絶て』

@ヒロイン
「……また、魔王主人公?」

さっきコメントを消してから、まだ30分も経っていない。

それなのに、またこんなコメントを残すなんて。よほどの暇人に違いない。

呆れながら、もう一度コメントを消す。

その瞬間、

『新着コメント:1件』

『名前 魔王主人公』

『何度この刻印を消したとて、無意味だ』

『我はそのすべてを感知できる力を持っており、再び刻印を残す事による消費魔力など、瞬きの間に回復する』

@ヒロイン
「なにこれ……消したら、感知できるの?」

つまり、この人は僕のブログを常に監視していて、コメントを消した瞬間にまた書いてくるという事らしい。

……気持ち悪い。

@ヒロイン
「……あぁ、もう!」

こみ上げる吐き気をおさえながら、またコメントを消す。

それから、すぐにブログの設定画面を開く。

@ヒロイン
「コメント設定、コメント設定……あ、あった!」

コメントを受け付ける。と書いてあった設定を弄り、コメントを受け付けないようにして、設定を保存する。

@ヒロイン
「これで、もうコメントは……っ、え!?」

『新着コメント:1件』

@魔王主人公
『このように稚拙な結界など、我には効かぬ』

@ヒロイン
「なにこれ……。どういう事……?」

何度も設定を見る。でも、何度見ても、コメントは受け付けないようになっている。

それなのに、コメントがある。

もしかしたらまだ設定が反映されていないのかと思って、自分の携帯端末を使ってコメントを書き込もうとしてみた。

けれど、それはできなかった。コメントを書き込むような欄なんて、存在していない。

それでは何も書けるはずがない。

それなのに……このコメントは、ある。

どうしてそんな事が……。

@ヒロイン
「……っ」

考え込んでしまいそうになって、首を横に振る。

今は、そんな事どうでもいい。この人はちょっとした裏技みたいなものを使って、書き込んでいるんだと思う。

それならそれでいい。僕が全部、消してしまえばいいだけなんだから。

@ヒロイン
「コメント、削除!」

マウスカーソルを動かして、削除をクリックする。

けれど。

@ヒロイン
「なんで……!?」

今度は、コメントが消えなかった。

まだ残っている。魔王主人公という名前が、コメントの欄に刻み込まれている。

『新着コメント:1件』

@魔王主人公
『これほどの時間が経っても尚、先程の刻印が消えていない事からすると……貴様はこのLvのものは消せぬようだな』

@魔王主人公
『これで力の差が理解できたのではないか?』

@魔王主人公
『大人しく、命を絶つが良い』

;ここまで

……。

……だめだ。もう、我慢の限界だ。

こういうのは相手にしないのが一番だってわかっている。でも、放置できない。

だって、

@勇者ヒロイン
『そんな言葉を他人に向けるなんて、最低だな』

命を絶て。つまり――死ね。

この人はそんな事を言う。それを許してはおけない。

@勇者ヒロイン
『魔王を名乗れば、何を言っても良いとでも思っているのか』

@勇者ヒロイン
『だとしたら、それは間違っている。それは、誰にも許されない発言なのだら』

そうだ。それは絶対に、人に向けて言ってはいけない言葉だ。

だって、言われた方はとても苦しい。とても辛い。

死ね。なんて、僕が一番思ってる。死ね。死ね。僕なんて死んでしまえ。早く死ね。死にたい。

そう思い続けている。死にたくてもがいている。それなのに死ぬ事ができない。

そんな辛さが、この人にはわからないんだろう。

死ぬ事ができない苦しさを知らないからこそ、簡単に「死ね」なんて言えるんだ。

@勇者ヒロイン
『そんなに僕に死んで欲しいというのなら、自分の手でやってみろ』

@勇者ヒロイン
『ほら。今すぐに、僕を殺してみせろよ』

@魔王主人公
『それはできぬ』

@魔王主人公
『我がいる世界と、貴様のいる世界は違う』

@魔王主人公
『だからこそ、自害せよと言っているのだ』

……世界が、違う?

@ヒロイン
「ふーん。今更、そんな変な設定で逃げる気なんだ」

きっと、これはこの人が慌てて脳内で考えた設定なんだろう。

「どうしよう。実際殺せって言われても何もできないよ」と焦って、適当に言ったんだろう。

でも、そんなのは認めない。

僕にしつこく絡んできて、言ってはならない言葉を繰り返したんだ。異世界なら仕方ないな、なんて言葉で済ませたりはしない。

@ヒロイン
「……死ねと言った責任は、とってもらうよ」

僕は目をすがめて、再びキーボードを叩く。

@勇者ヒロイン
『なるほど。事情はわかった』

@勇者ヒロイン
『それなら、魔王主人公が僕の世界に来れるよう、手伝ってやるよ』

@魔王主人公
『……貴様、正気か?』

@勇者ヒロイン
『ああ。正気だ』

@魔王主人公
『ありえぬ。魔王に殺される事を望む勇者など、存在するはずがない』

ああ、慌ててる。慌ててる。

内心で笑いながら、僕はキーボードに指を叩きつける。

@勇者ヒロイン
『僕は殺されたい。自分で死ぬんじゃなくて、殺されたいんだ』

自殺はいろいろな方法を試して失敗した。でも、他人から殺されるというのは、まだ試していない。

@勇者ヒロイン
『だから、殺してくれ。なぁ。これはお前にだって都合が良い事だろう?』

この自称魔王は、僕を殺したい。僕も、僕を殺したい。それなら、利害の一致じゃないか。

今更、違うなんて言わせない。

この人が本当に僕のところに来て、殺してくれるというならそれでいい。むしろ大歓迎だ。

たとえそれができないのだとしても、暇潰し程度にはなってもらおう。

@勇者ヒロイン
『魔王なら魔王らしく、しっかりと、僕を殺してくれよな』

@勇者ヒロイン
『期待してるよ、魔王主人公さん?』

 


それでは、次回はこの続きを掲載!

 

 

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