シナリオ編7「キャラクターの心を描く 2」 第44回ウォーターフェニックス流ノベルゲームの作り方

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第44回 シナリオ編7「キャラクターの心を描く 2」
執筆者:シナリオ・イラスト担当 R


 

他の会社さんや、個人のクリエイターがどうやってノベルゲームを作っているのかはわかりません。
ここに書かれているのは、あくまで私達「ウォーターフェニックス」的ノベルゲームのつくりかたです。

 


こんにちは。Rです。
前回に引き続いて、キャラクターの心情を描写する方法について書いていきます。
前回の記事で紹介したものは、どれも文章で表現する方法でした。
しかし、私たちが作っているのはノベルゲームです。
ノベルゲームでは、文章以外にも様々な方法を使うことができますから、今回はそれを書いていきます。

◆表情で示す
◆ボイスで示す
◆演出で示す
◆BGM・SEで示す
◆選択肢で示す
◆それぞれの使い方

 

 

◆表情で示す
キャラクターの表情で示す。
これはわかりやすいですね。
 gamen1   
↑このように表示された「おはよう」よりも、

gamen2

↑こちらの「おはよう」の方が、嬉しそうに言っているように見えますよね。
このように、イラストを表示すると、キャラクターがどんな気持ちで言っているのか直感的に理解する事ができます。

また、↓のように、あえてそのセリフの雰囲気とは違った表情を表示するようにすると、読者の想像力を掻き立てる事もできると思います。

gamen3

これもまた、一つの表現方法でしょう。

ただ、ノベルゲームにおける表情というのは基本的にパターンです。
怒っている時はAの顔、悲しい時はBの顔。といったように、用意されているものを表示しています。

漫画やアニメと違って、そのセリフごとに表情を用意しているわけではありません。(やろうと思えばできるのでしょうが、それには何千もの数のイラストが必要になります)

なので、同じ表情を使いすぎていると「あ、またこの顔か」みたいに感じる事もあるでしょう。
それを避けようと表情を変化させすぎていると、今度は、泣いたり笑ったり忙しいキャラクターに見えてしまったりもします。
便利ではありますが、表情だけですべての心情を理解してもらうというのは難しいでしょう。

 

 

◆ボイスで示す
キャラクターボイス。これも、とてもわかりやすいですね。
声優の演技によって、キャラクターは生き生きと動き出し、感情を表してくれます。
これは基本的にセリフ一つ一つに演技してもらう事になるので、キャラクターの表情と違って、「またこれか」と思われる事もありません。

個人的には、特にキャラクターボイスの力が発揮されるのは、苦悶の声や、泣き声だと思います。
シナリオで叫び声としての「ギャアア」とか、泣き声として「……ぐすんっ」という言葉を書いてみると、どうしてもわざとらしいというか、陳腐に感じてしまう事も多いでしょう。
かといって、小説のように事細かに描写をしすぎると、ノベルゲームには合わない場合も多々あります。

しかしそんな時、キャラクターボイスがついていれば一瞬でそれは叫びになり、泣き声になるのです。
正直、とても助かります。

ただ、それはあくまでも声優がそのキャラクターを理解したうえで、できる演技なのだと思います。
声優は演技によってキャラクターの心情を表現してはくれますが、そもそもそのキャラクターに心がなければ、表現も何もありませんよね。
ですから、やはりまずは文章上でキャラクターの心情を描く必要があると思います。

 

 

◆演出で示す
演出と一言でいってしまうと簡単なようですが、様々なものがありますね。

たとえば、文字をゆらゆら揺らす事でキャラクターの恐怖を示す事ができます。
たとえば、文字の大きさを変える事により、小声や大声を表現できます。

たとえば、↓のように色の反転をしたり、画面を真っ赤にしたりすれば、動揺や絶望を感じてもらう事ができるでしょう。

gamen4gamen5

今ここで示したものはよく見かける基本的なものだと思いますが、他にも発想しだいで、様々な心理描写が可能だと思います。
新鮮な演出があると、ガンと心に響きます。面白いですし、印象に残ります。

ただしそういった演出を多用しすぎた場合、文字がよみにくいとか、スキップの時に邪魔になって面倒だと感じさせてしまう場合もあります。
同じ事を繰り返されると飽きてしまいますし、ここぞという時にだけ使うぐらいの方が読者の心に残るでしょう。

 

 

◆BGM・SEで示す
音。これも大事なものですね。
主人公がどんなに落ち込んでいたとしても、その時に流れる音楽が陽気なものではいまいちです。

たとえば主人公が「もう死にたい……」とか思っているシーンで、「森のくまさん」が流れていたらどうでしょう。
たとえば主人公が「やった!」と大喜びしているシーンで、「エリーゼのために」が流れたらどうでしょう。
どちらもチグハグな感じがして、雰囲気ぶち壊しですよね。(そういう違和感による、狂気を感じる事はできるかもしれませんが)

逆に、ごく普通のシーンでも挿入歌が入るだけでなんとなく気分が高揚する、という事もあるでしょう。
ホラー映画も音を消せば大分怖さがなくなりますし、音楽は直接心をゆらす部分です。
それらの音によって、読者の心情とキャラクターの心情が交わるといっても過言ではありません。キャラクターの感じた高揚感をそのまま、読者にも伝える事ができるのです。
ですから、BGMやSEも立派な心情描写の方法の一つだと思います。

 

 

◆選択肢で示す
これは、ノベルゲームの特性を生かした方法ですね。
選択肢というのは、主に話を分岐させるために使うものだと思います。
しかし、このような選択肢が出たとしたらどうでしょう?
gamen6
これは、選択肢であって選択肢ではありません。見ての通り、どれを選んでも同じです。
他には、いくつかの選択肢が出たものの、勝手に消えていって一つしか選ぶことができなくなる……という演出をするものもあります。この場合も答えは一つです。
RPGでも、王様から魔王退治を頼まれて「いいえ」を選ぶ→「いや、しかし……」となり、結局「はい」を選ぶまで話がループするという事がありますよね。
やはりそれも同じです。答えは決まっています。

同じならいちいち選ばせなくてもいいじゃないか、と思うかもしれません。
面倒だと感じる方もいるかもしれません。
しかし、これも描写の一つなのです。

他の選択肢があるように見えるけれど、それしか選ぶことができない。
それは、抗うことのできない主人公の運命を示します。

どうしようかと考えた時に、思い浮かぶ選択肢が一つしかない。それは、主人公の考え方を示します。
例えば先程のこの選択肢が現れたとしたら、

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その時、この主人公には「彼女を助ける」という思いしかないのです。
「助けない」という選択肢は最初から存在しない。そんな、強い意思を示しています。

このように、一見無意味に感じられるかもしれない選択肢も、心理描写の一つとして考える事ができるでしょう。

 

 

◆それぞれの使い方
さて。こうして、今思いつく限りの心理描写の方法を書いてみましたが、いかがでしょうか。
この中のどれかひとつだけを使わなければならない、なんて事はありません。
むしろ、様々なものがうまく絡み合えば、キャラクターの心情をより深く描く事ができると思います。

前回も言いましたが、心情を察する事のできないキャラクターは、よくわかりません。
ミステリアスだと捉えれば魅力の一つとなりますが、物語に登場するすべてのキャラクターの心情がわからない事は避けた方がいいでしょう。

誰が、何のために、何をする物語なのか。
それをハッキリさせるためにも、キャラクターの心情の描写は欠かせないものだと思います。

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