シナリオ前の準備編3「そのキャラ、生きてきましたか?」 第36回ウォーターフェニックス的ノベルゲームの作り方

bro5

他の会社さんや、個人のクリエイターがどうやってノベルゲームを作っているのかはわかりません。
ここに書かれているのは、あくまで私達「ウォーターフェニックス」的ノベルゲームのつくりかたです。


第36回「そのキャラ、生きてきましたか?」
執筆者:イラスト・シナリオ担当 R


 

こんにちは。Rです。
前回の記事で、キャラクターの姿が決まりました。
その顔を見ているだけで、だんだんと、喋る姿が思い浮かんでくるものです。
せっかくなので、もっと想像してみましょう。

◆キャラクターは、生きてきた
◆あるはずなのに、無い
◆過去を描く
◆キャラクターに思いを馳せる

 

◆キャラクターは、生きてきた

企画担当のケイ茶から送られてくるキャラクター設定には、様々なものがあります。
年齢、性格、口調、好きな食べ物、物語上の欲求……など。
どれも大事なものですが、この時点で必ず確認しておくものが、キャラクターの過去です。

たとえば物語登場時に、主人公が17歳だったとします。
だとすれば、その主人公は物語が開始するまでに17年間生きて、様々な事を感じ取っているはずです。
嬉しかった事、悲しかった事、驚いた事。様々な体験をしたうえで、物語登場時の「主人公」というキャラクターになっているのです。
特にそのキャラクターの性格が特徴的であればあるほど、衝撃的な過去があったのだと私は考えます。その方が、納得ができるからです。

 

◆あるはずなのに、無い

キャラクターの過去を意識して本編を書く事ができるのか、というのは、キャラクターの描きやすさに直結すると思います。

これは自分の失敗談なのですが、私とケイ茶が初めて作った物語「記憶人形の記憶喪失」ではひどいものでした。
この物語の出来が良かったとか悪かったとか、そういう部分はとりあえずおいておく事として。
とにかく、キャラクターを描きにくかったのです。話を進ませたいのに、そのキャラクターが言いそうなセリフが思い浮かばなかった。それは事実です。

というのも、この物語のキャラクター達。実は、過去に関する設定がなかったのです。

この物語の主人公・サラマンドラは、生きている影です。
人間の影として生活する。それは一般的な影にとって、とても名誉な事でした。しかしサラマンドラは、自分が人間の影に任命されても喜びません。それどころか、嫌悪感すら抱きます。
どうして、彼はそんな風に、他の影と違う考え方になったのでしょう? どうすれば、その嫌悪感は消えるのでしょうか?
それは……。

わかりません。
当時の私にも、そして今の私にもわからないのです。
それは、過去が考えられていないからです。そこにはただ、「人間の影になるのを嫌がっている」という設定があるだけでした。
「なぜ嫌がるようになったのか」が考えられていなかったために、このキャラクターが何を考えて発言しているのか、わからない部分が多々でてきてしまったのです。

過去のないキャラクターは、極論を言えば、物語が始まった瞬間に生まれたようなものです。
つまりは何も知らない、無垢な状態という事になります。
それなのに「人間の影になる事への嫌悪感」を抱いていたために矛盾が生じ、描きにくいキャラクターになってしまったのだと考えています。

そういった事態を避けるためには、やはり、キャラクターの過去の設定は具体的に決めておくべきだと思います。

 

 

◆過去を描く

では、過去の設定を細かく決めて「ああこういう過去があったんだね」とうなずけば終わりでしょうか?
以前の私は、そこで終わりにしていました。
しかし途中から、もっと良い方法がある事に気がつきました。

それは、その設定をエピソードとして描く事です。

例えば、交通事故で選手生命を絶たれたキャラクターを描きたいとします。
事故にあって大怪我をした。苦しんだ。
それはただの、設定です。
キャラクターを描くうえで多少の意識はするでしょうが、味気のない言葉でしかありません。ぼんやりとニュースを聞いている時と同じです。

しかし、それを実際に物語として描くと、印象がかわります。

大怪我をして泣き叫ぶキャラクターや、その後の後遺症で苦しみ、歯を食いしばりながらリハビリをする様子を描けば、それは設定ではなくエピソードとなります。
苦しんだ。そんな一文だけではわからなかったキャラクターの感情の揺れがわかりますし、愛着も湧きます。
自分で書き、そして必要な時に読み返す事で、そのキャラクターが実際に生きてきたんだと実感する事ができるのです。

※キャラクターの過去エピソードを書く時は、自分自身が感情移入することを目的としているので、基本的に一人称で書いています。

 

 

◆キャラクターに思いを馳せる

こうしてキャラクターの事が少しずつわかってきたら、あとはひたすら考えるだけです。

歩きながら、ふと思い出します。こんな時、このキャラクターがいたらどんな反応をするだろうか、と。
椅子に座り、ぼんやりと考えます。この部屋の中に足を踏み入れたキャラクターは、何を言うのか。どの場所に、どんな風に座るのか。
物語中のこのシーンで、このキャラクターは何を思い、何を喋るのか。

とにかく、朝も昼も夜も、ふとした瞬間に考え続けるのです。
そうしていると、夢の中にもキャラクターが出てくるようになります。目覚めた瞬間にもキャラクターの事を考えるようになります。
そこまでくれば、もう怖いものなしです。完全にキャラクターの事を理解できたと言えるはずです。

さて。キャラクターがわかったところで今度こそシナリオを……といきたいのですが。
もう少し、決めておくと便利(というよりも決めておかないと後で困る)事があるので、次回はまだ準備編です。

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