シナリオ編2「流れを探して想像しよう」  第39回ウォーターフェニックス的「ノベルゲーム」の作り方

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第39回 シナリオ編2「流れを探して想像しよう」
執筆者:シナリオ・イラスト担当 R


 

他の会社さんや、個人のクリエイターがどうやってノベルゲームを作っているのかはわかりません。
ここに書かれているのは、あくまで私達「ウォーターフェニックス」的ノベルゲームのつくりかたです。

 


こんにちは。Rです。
物語を描くにあたって、最近の私が意識しているのは「起承転結」です。
これは四コマなどで馴染みのある人も多いと思うのですが、大雑把に言うと、

起 キャラクターについての説明があったり、何か事件が起きたりする
承 それによって起こった出来事
転 何か少し違った事が起きる
結 その結果、どうなったのか?

という流れの事です。(こういった説明が苦手なので、わかりにくかったらすみません)
※前回も書いたように、物語の流れの考え方としては3章構成の序破急というものもありますが、私は起承転結という考え方が好きなので、とりあえずこの記事では起承転結を主軸において書いていきます。

◆大きな流れ、小さな流れ
◆流れを探す
◆実際に、起承転結を考えてみよう
◆起承転結を考えるメリット その1
◆メリット その2

◆大きな流れ、小さな流れ

では、物語の起承転結を作ってみましょう!
……といきたいところなのですが、そもそもウォーターフェニックスでは、企画担当のケイ茶が物語の流れを考えています。

つまり、起承転結がすでに作られているのです。
具体例が欲しかったので、ケイ茶が「企画編8」で書いていた物語の流れをもらって考えてみる事にします。(短くまとめてあります)


ケイ茶から送られてくるプロット サンプル


(起)
小さな村の農家の一人息子として生まれた主人公は、一人の兵士と仲良くなる。

(承)
その人物から話を聞くうちに兵士に憧れをもち、稽古をつけてもらうようになる。
魔王が復活したという噂を聞くが、興味を示す事はない。

-時間経過-

ある日、その兵士が魔物に殺されたと知る。
憧れていた兵士が容易く殺されてしまった事実に、主人公はショックを受ける。
それでも、主人公は1人で稽古を続ける。

-時間経過-

(転)
主人公が日課の稽古を行っている間に、村が魔物に襲われる。
主人公が来た時にはすでに遅く、家族や親しい人全員を喪ってしまう。

(結)
この事によって主人公は魔王を憎む。
同時に、他の人に同じような気持ちを感じさせたくないと思って、魔王を倒すための旅に出る。


見てください。すでに起承転結ができています。
主人公は勝手に生まれて、勝手に旅立ってしまいました。
これなら、私が起承転結を考える必要はないように感じられますよね。

しかしそれは、これをまとめて「1つの流れ」として見た場合の話です。
一見すると1つの流れのように思える上記の物語なのですが、実はこれは、いくつもの小さな流れが集まってできているのです。
では、この中に小さな流れはいくつあると思いますか?

私は、無限だと思います。

◆流れを探す
数の話をする前に、実際、先程のサンプルの中から流れを探してみましょう。
まずは、起の部分。

『主人公は、一人の兵士と仲良くなる』
ここです。
仲良くなるとありますが、顔を合わせて一瞬で仲良くなるなどというのは稀ですよね。
仲良くなるまでの過程、つまり、流れがあるはずです。

次に、承の部分。
『稽古をつけてもらうようになる』
ここも気になる部分ですね。
兵士と仲良くなったからといって、そのまま一足飛びに稽古をつけてもらうようになるのでしょうか?
もしかしたら、そこにも何かひと悶着あったのかもしれない。
そう思ったら、チェックです。

『ある日、その兵士が魔物に殺されたと知る』
さて。主人公は、この情報をどうやって知ったのでしょう。
小さな村です。世界設定から考えると、現代のようにテレビで報道されるはずもありません。それなのに情報が伝わってくるのですから、それは少し普段とは違った何かがあったのでしょう。
噂話で聞いたとしたら、真偽を確かめるために主人公が駆けずり回るかもしれません。
何も知らずに歩いていた時に、偶然、血だらけになった持ち物を見つけたのかもしれません。
ここでも、流れを考える事ができそうです。

とりあえず、これぐらいにしておきましょう。
流れ流れと書きましたが、結局のところこれは、妄想できる部分を書き出すという事です。
この部分に起承転結を考える事ができるかもしれない。そう思ったら、どんな場所でも物語になります。
だから、無限なのです。
極論を言ってしまえば、意識が覚醒して目を開ける一瞬の間でも、なんらかの方法で起承転結をつける事ができるのならば、そこに物語の流れは生まれます。

◆実際に、起承転結を考えてみよう
さて。流れがありそうだな、と思うと部分をみつけたら、早速、起承転結を考えてみましょう。
まずは主人公が兵士と仲良くなる部分です。

(※本来はキャラクターの性格に合わせて想像するのですが、今回はキャラクター設定資料が用意されていないので、サンプルの流れから読み取れる範囲で
主人公
・小さな村に生まれ、魔王に興味がない=世間知らず。
・兵士が死んでも修行を続ける=真面目で努力家。
・他の人に同じような気持ちを感じさせたくない=優しい。
・魔王を倒そうとする=強気

兵士
・主人公に稽古をつける=面倒見が良い
・憧れを持たれる=様々な経験をしている、歴戦の勇士
と仮定し、簡単に考えてみます)


『主人公は、一人の兵士と仲良くなる』の流れ

 村の周辺に凶悪な脱獄犯が隠れているという情報により、王国から小隊がやってくる。
 しかし、その脱獄犯は一向に見つからない。
  暇を持て余した一部の兵士は村人に強く当たるようになり、対立が生まれる。
  主人公も兵士を信用せず、関わろうとはしない。
 そんなある日、畑に向かおうとした主人公の目の前に脱獄犯が現れる。
  殺されかけたところを兵士に助けられる。
 主人公は兵士に感謝し、仲良くなる。


はい、できました。
このような感じです。こうして起承転結を考えると、より具体的なイメージができますよね。

ここでとにかく重要なのは、その話の流れで何を一番示したいのか、という事だと思います。
主題がハッキリしていて、かつ、それに向かってまっすぐに話が流れていくととても理解しやすい物語になる事でしょう。
上記の流れだと、主題の「仲良くなる」きっかけが理解しやすいと思います。
また、ここは物語全体における重要シーンになりそうな場所だったので劇的(生死に関わるような展開)になりましたが、もっと穏やかな流れもあります。
たとえば、

 


『稽古をつけてもらうようになる』の流れ

起 主人公は兵士に稽古を頼むが、断られてしまう。
承 それでも主人公は何度も頼む。
転 兵士が根負けする。
結 稽古をつけてもらえるようになる。


これもまた、1つの流れです。
転というほど大きな事はおきていませんが、「稽古をつけてもらいたい主人公」という始まりと、その結果「稽古をつけてもらえるようになる」ハッキリとわかるので、全体としてのまとまりが感じられると思います。

このように、どんな場所でも流れを作る事ができる、というのがわかって頂けたでしょうか。
こうしてケイ茶の文章からいくつもの流れを書き出していくのは、正直いって面倒です。
大きな起承転結の流れはできているのに、わざわざ細く考える必要あるの? と思う方もいるかもしれません。
しかし、これが本当に大事なんです。

次回は、こうして細かな流れを考えるメリットについて、もう少し書いてみたいと思います。

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